あれから大手商社──柊(ひいらぎ)カンパニーのトップは俺達幕府に連行され、大幅な路線変更を余儀無くされた。陽(あきら)ちゃんのご両親を殺害した天人も捕まり、事なきを得た。そして彼女はというと喫茶店を辞め、今は屯所で働いている。彼女が働きたい、と言ったらしいが俺は知ってる。副長が彼女を誘っていたこと。
屯所に勤め始めた陽(あきら)ちゃんはすんなりと俺達に溶け込んだ。
「オイ柊(ひいらぎ)!なんでンな甘ったりィ飲みもんが置いてあんだよ!?」
『………』
「俺はお茶っつったろ!」
「いちご牛乳は俺のでーす。マヨラー野郎はあっち行ってな」
「旦那ァそりゃあ無理でさァ。ここに陽(あきら)がいるんでねィ」
「そうですよ!だって副長は陽(あきら)ちゃんのこ!!ブベラッ!!」
「なんでテメェらは屯所にいるんだよ!! 総悟!テメェはさっさと見回り行けっつっただろ!! 万屋テメェは仕事しろや!! 山崎ィィィィイ!!」
「な、なんで俺だ、ゴブァッ!!」
「見回りは後ちょっとしたら行きやす」
「俺も陽(あきら)ちゃんが変なことされてないか見に来てるんですーどっかのマヨラーからセクハラとかセクハラとかセクハラとか受けてないかね」
「してねェよ!テメェらは俺の仕事の邪魔なんだよ!! 山崎!! さっさと監察行け!」
『………
アンタが一番うっせぇよ』
「ああん?何か言ったか柊(ひいらぎ)」
『………』
「無 視 す ん じ ゃ ね ェ よ!」
『………っち』
「舌打ちすんじゃねェェェェエ!!」
「はいはい。土方さん痴話喧嘩はやめてくだせェ…見てるこっちが腹立つ」
「ほんとほんと。犬も食わないのによォ。しかも俺達の目の前で」
「まったくでさァ。旦那の言うとおり。独り身の俺達を馬鹿にしてんだよあのマヨラー」
「なー。ニコチン野郎は思春期真っ只中の中学生ですかー」
『…ぶっ』
「ブフッ。ち、中学生って!副長がちゅうが…!! ブベラッ!」
「いい加減にしろやテメェらァァァァア!!」
「だだだ、だれが!こんな女!第一、こんな暴言吐くやつ女じゃねェ!!」
『(ブチッ)…さっきから黙って聞いていれば…』
「あ。陽(あきら)がキレた。こいつァ珍しい」
「山崎、あとは頼みましたぜィ」
「おーほんとだ。じゃ、俺達は消えるか」
「ジミー、報告よろしく!!」
「え、ちょ、二人共!? 俺だけおいて!グブベァッ!!」
『山崎うるさい』
『……なんですか…さっきから…女じゃない…?へー…じゃあ着物着るのやめます。ジャージよこせ』
「ばっ、ち、ちがう!別に女じゃないとかそういうのじゃなくてな!」
『………なんでわたしを女中にしたんですか』
「だから、それはその、」
『…わたしを馬鹿にするためですか?…だったらいい迷惑ですねこのニコチンヤロー』
「だれがニコチンヤローだテメェ!! 馬鹿にもしてねェよ!!」
『……じゃあなんで』
「っち………からだよ!!」
『……声が小さくて聞こえないんですけど』
「だからァ!! 〜っ、テメェが心配だからだよっ!!」
『─っ!?』
「…テメェが他人に変なこと言わねェか不安だからだ。俺がテメェの仕事監視してんだよ」
『………
ばーか』
「ああん?なんつった?」
『…馬鹿ですね』
「おーおー何とでも言え」
『でも……そんな土方十四郎が好きなわたしはもっと馬鹿です』
「っ!?」
『〜っ、……じゃ』
「おい、待てよ…!」
『………離して下さい』
「やなこった。…陽(あきら)、一回しか言わねェぞ。俺は
だれよりも、テメェがすきだ」
(結局、副長は陽(あきら)ちゃんのことが大好きなんだなぁと思います、まる)(…オイ、山崎ィ)(なんすか、隊長?)(これ大量印刷して屯所にばらまきやしょう)(それいいね、沖田くん。そうしろジミー)(え?そんなことしたら俺、切腹…)(これで土方いじる新しいネタ見つけたぜィ)(ま。幸せそうで何よりだ)
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