over 106 車から降りる気配のない柊に魁は恐る恐る尋ねた。 「あの…降りないんですか??それとも誰かと待ち合わせですか??」 「さすが魁さんですね。そうなんです。怜さんの知り合いの方と待ち合わせ…あ。いらっしゃいました」 魁が柊の視線を辿っていくと、沢山の人が行き来しているなかで、こちらに向かってくる一人の男が見えた。 その人はチラッと車を覗き込みドアを開けた。 「あんたが怜の言ってた谷川 柊??」 「はいそうです。貴方は竹下 港(みなと)さんですね??どうぞ、お乗りください。」 「あぁ。わざわざ車出してもらって悪いな。ところで後ろの…」 港は助手席に乗り込むと後ろに座っていた魁に目を向けた。 魁は慌てて 「はじめまして。滝沢 魁と申します。あの…もしかして…作家の竹下 港さんでいらっしゃいますか??」 「あぁ。よく分かったな。」 港は驚きながらも魁の言葉に頷いた。 「えぇ。僕港さんの本大好きで、何度か雑誌などでインタビューを受けているのを拝見していて…。」 「そうか、ありがとう」 そう言って港は嬉しそうに笑った。 そして、港は柊に視線を戻し 「本当は死ぬ気で飛ばせ…と言いたい所だけど、さすがに俺も大人だからな。凄い急いで向かって」 それ大して変わらない…と魁は思ったが、思うだけにとどめておいた。 「クスッ…分かりました。魁さん。しっかりシートベルトつけておいて下さいね。」 そう言って魁達を乗せた車は走り出した。 …猛スピードで。 [*前へ][次へ#] [戻る] |