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あの日以降、皆瀬は出勤しなくなった。考えなくても分かる。皆瀬は、俺に合わせる顔が無いのだ。

皆瀬はとてもオレのことを知っていた。というか知りすぎていた。ついでに言えば変態の域だった。


あんな詳しいことまで知っていたなんて…
全くオレは皆瀬の存在に気づいていなかった。
もちろん、顔も、声も。
初めて見た時はひやりとしたが、それ以上は何とも思わなかったし、どっかで見たことある顔でも無かった。


いろいろ悩んでいるところに何も知らない父から、



「優秀な人材をまたも失いたくないんだ、六実。春彦君はとても誠実で真面目な青年だ。頼む、春彦君の家へ顔を出すだけでもいい…会いに行って欲しい。」

「やっ、親父…皆瀬は俺が嫌で出て来ねぇんだよ。だから俺が行っても…」

「春彦君は六実に会いたいの一点張りなんだよ。だから頼む!六実!」




珍しくあの父から託けを必死に頼まれた。

確かに皆瀬のことは気になるけど、またあの時みたいに二人きりになったら何されるか…考えただけでも恐ろしい。



「六実っ、頼む!」

「わ、分かったよ…親父もらしくねぇな。仕方ねぇから俺が行ってやる。」

「ありがとう、六実。明日から大事な会議の連続でな、春彦君が居ないと正直厳しいんだ。」

「そ、そうか。じゃあ今から行くわ、住所教えてくれ。」



父の熱意に圧倒されたオレは適当に行くことを承諾して皆瀬の家に向かった。

二人きりというシチュエーションは一抹の不安があったが、何とかなるだろうと安易に考えていた。









皆瀬の家は北中近くのバス停に乗って10分。茶色い壁に覆われたひまわりハイツ、二階の階段手前。

オレは緊張で震える身体をギュッと抱きしめてピンポンとチャイムを鳴らした。



「よぉっ!みなせっ!元気にして
「入れ。」

「は、」



こっちは意を決してわざわざ訪問して来てやったのに、皆瀬のヤツは偉そうに命令口調でオレを出迎えた。

気分を紛らわすために明るく声をかけたのだが…

威圧感ある鋭い生の瞳。
眼鏡をかけていないからか、皆瀬春彦本人が鮮明に見えた気がしてオレは言葉を詰まらせた。



「お、じゃま…しまあー、うあああっ!」

「本当に貴方って人は無知蒙昧で、可憐で、淫猥な存在だな。」

「だあっ!くそっ、離せッ!離せよ皆瀬ッ!!」



一歩足を踏み入れた途端、皆瀬はオレの腕を強引に引っ張り、寝技をかけてきやがった。

簡単に組み敷かれたオレは皆瀬の不敵な笑みを目の前にただ足をばたつかせることしかできない。


こうなることは何となく予想していた。
だけど、だけど何故か下に引かれても猶、今ある事実の理解に苦しんだ。



「ずっとこうしたいって…俺はずっと思っていた。」

「ッ、やめっ、皆瀬!」

「これを最後の思い出に…俺は死んでも忘れないよ。」



皆瀬の言葉…
『最後』は『最期』?

『死んでも』は『死ぬ』?

何を死ぬ前提で豪語しているのか、くだらねぇ…バカかコイツと思った。



「うぉ、」

「む、つ、み…」

「なっ、だぁあッ…こ、こっちくんなッ!!」



調子に乗った皆瀬は薄く開かれた唇をオレの頬にちゅっと落とした。

ひんやりしたキスを顔中に散らし、とうとうくちびる同士が重なってしまう。



「ふあっ、んっ…みなっ、せぇっ…」

「んっ、」

「ばっ、だ…ぁんっ、」



するりと自然に伸びた皆瀬の大きな手は脇腹から腹をまさぐり、胸の先を揉み扱き始めた。

くりくりと指先で乳首を弄られると、何故か身体をくねらせ、快感に耐える女みたいな自分。


いつの間にか、この時からオレのカラダは皆瀬春彦のモノになっていたんだ。





[*Ret][Nex#]

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