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家に帰るとオールバックにキリッとした鋭い目、銀縁の眼鏡。それなのにも関わらず、可愛らしい青のギンガムチェックのエプロンを付けてオーブンの温度設定している皆瀬の姿があった。

クリスマスイベントで特大ケーキを作ることを西大路社長に打診すると、社長は明るい声でそれはいいと承諾してくれた。有名パティシエを招き、大掛かりだが成功出来るようオレは皆瀬と頑張りたい。



「クリスマスまで…後二週間だね」

「ああ!西大路社長もホテル客のためにサプライズするのもいいって言ってくれたぜ」

「さすが、六実。モテる男はサプライズが好きだからね」

「バッ!バカヤロー!今はもう…」

「え?」

「っるせー!いーからメシにするぞ、」



結局オレは一切手伝うことなく。今日も今日とて皆瀬の手料理。皆瀬特製グラタンはオレの大好物。ブロッコリーのあのゴロゴロした感じがあまり好きじゃないけど、皆瀬が作ったのなら普通に美味しく食べられた。

ご飯も洗濯も掃除も自分で何でも出来る男なので、オレは益々何も出来ない奴になっている。



「いっただきまーす!」

「いただきます…」

「うえっ、あ、あちぃっー!」

「む、六実…ちゃんと冷まさないとダメだよ」

「チッ、俺が猫舌なの知ってんだろ?」




薄くスライスされた人参やブロッコリーはオレの口に合わせてそうされていた。大きな具材だと、猫舌でいつまで経っても食べられないので、マカロニでさえも半分にカットされている。

そんな気を遣ってくれているにも関わらず、俺は文句を言う。それでも皆瀬は絶対に怒らない。優しい瞳で包み込んでくれるよう、全てを受け入れてくれる。だからこそ、こいつと一緒じゃなきゃ俺はダメなのだ。



「ふぅふぅ、」

「んあっ、お前な…」

「冷まさないと食べられないなんて、本当…子供だね」

「だからって冷ますのぐらい、自分で出来るっつーの!」



熱く湯気が立ち込めるスプーンの一口をふぅふぅと冷まして僕に差し出す皆瀬。差し出されたら食べるのが筋と思って食べるが、なんだかラブラブ新婚夫婦みたいで恥ずかしい。

皆瀬は嬉しそうに笑っているけど、オレは顔を真っ赤にしながらブロッコリーを噛んでいた。



「グラタンにしたの…失敗だったかな」

「なっ、なんでだよおっ」

「だって…俺は食べ終わったけど、六実…猫舌だから遅い」

「悪かったな」

「早く寝たいのにな」

「ぶこっ!お、お前は…」



既に食べ終わった皆瀬は冗談なのか、本気なのかオレと寝たいなんて言ってくる。こいつは本当、発情した犬みたいな奴だ。お風呂も一緒に入るし、布団もただでさえ体がデカくて窮屈なのに一緒にしようとするし、朝勃ちしたら押し付けてくるし。毎日、真面目な仕事場では考えられないぐらい。

勃ち過ぎて馬鹿になってんのかもしれない。



「先にシャワー浴びて待ってるよ」

「ん、あ…ああっ、」

「洗い物ぐらいはできるよね」

「ああ、」

「今夜は六実に着てもらいたい衣装があるからね」

「はぁ?!」



残り一口の所で爆弾発言が投下された。
後ろを振り返ると何やらゴソゴソとバックの中から赤い服を取り出し、広げてオレに見せてくる。

まだ二週間前なのにも関わらず、サンタのコスプレ(女用)を手にウキウキワクワクした様子の皆瀬。かなりのミニスカートでこんな趣味もあったのかと、驚かされる。



「俺はトナカイなんだ」

「ぶうっぅ!」

「今夜は六実…楽しくなるね」



と、同時にトナカイの角を頭に付けてその姿のまま、お風呂場へ向かうアホの皆瀬。オールバックに鋭い目、博学多才の見た目にトナカイの角は傑作だった。風呂から上がれば髪は落ちて、少し幼くなるのだろうけど、皆瀬は本当に面白くて、優しくて、しっかりしてて、オレにとって最高の人だ。きっと、みんな皆瀬に会ったら惚れてしまうに違いない。

そう思うと何だか切なくなってきて、急いでグラタンをかきこみ、洗い物するとは言ったがそのままに。食後すぐの風呂だけど気にしない。



「み、皆瀬!オレも風呂入る!」



同じ空間に居て取られるも何も無いのだけど、オレは廊下で服を脱ぎ捨てながら皆瀬のいる風呂場へ駆け込んだ。





END





後日談は特設ページにて行います。



[*Ret]

あきゅろす。
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