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何秒間か瞳を見つめられただけで、俺はこの出会いをくれた神を崇めた。全身から湧き出てくる哀しい感情、狂おしいほど愛しい感情を初めて感じた俺はその一瞬だけで“彼の為に生きよう”と強く思った。

彼の為に一生尽くして生きることが出来るなら本望だと、きっとこれは運命に違いないと強く感じてしまっていた。



「今回、みんなに配ったレポートは藤堂クンのです。しっかり読んで感想を書いて提出するように!では、授業を終わりにします。」



3限終わりにレポート提出を宿題に出された俺はこの題材を書いた張本人、教壇に立つ藤堂クンを見つめた。

派手な金髪に鋭く吊り上がった目。ひょろりとした痩せぎすな体型に見合った長い手足。 ただ姿を見ただけで心臓が飛び出しそうなくらい張り詰めて俺の世界は逆転していた。



(藤堂、この後どうすっよ?)

(あぁー、わりぃ中村。今日は親父と用事があってな…だからもう帰るわ。)

(へっ、珍しい…ムツミ坊ちゃまはパパとお食事会ですかね、)

(やめろよなぁ、その言い方。また明日たっくさん遊んでやっからよ。じゃあな!)



キャッキャと聞こえた会話をばっちり聞いていた俺は彼の下の名が出てはて、と思った。藤堂と言う姓は俺の知り合いに居た。知り合いなんてもんじゃない、俺の尊敬する庄三おじさんは施設のみんなのお父さん的存在だった。

その庄三おじさんは確か『ムツミ』と言う名の子が居ると語っていたが、まさか…と俺は思った。



(あーもしもし、親父?あぁ、分かってるよ。バス乗って家帰るから、うん…)



一大の前に出ているバスに乗り込んだ藤堂ムツミは1番後ろの席に座り、メールをパチパチと打ちはじめていた。一方、俺はどこのバス停で降りるのだろうとバスが停まるごとに横目で藤堂ムツミの様子を伺っていた。

つまり、尾行していたのだ。



 『ひまわり町北中前』



その表示が出たと同時に携帯を片手に藤堂ムツミは立ち上がった。

一大にはバス通学なのか、意外と近くに住んでいるんだなと思った俺は降りる人の列に並んで金を払った。



(えぇー…んなのメイドに行かせろよ。俺様、今歩いてて忙しいんだわ。)



再び父親と電話を始めた藤堂、ふらりふらりと歩いているだけで全然忙しそうな様子は無い。俺の中でこれは初めて見る種類の人間だった。

こんなワガママな奴、よくこの歳までこうも上手く生きてこれたなものだと思った。



「ただいまー…」

「おかえりなさいませ、六実様…」



たどり着いたのはそれはまた立派なお屋敷だった。

茶色の分厚い板の門がギィッと古めかしい音を立て、藤堂六実は中に吸い込まれるよう入っていった。

その後、後ろをつけるよう長い黒の車から出てきたのは俺の大好きな庄三おじさんで、この二人が同じ家に入った瞬間…予想通り。

家族だと認識した俺は一人興奮していた。と同時に、もっと『藤堂六実』について多くを知りたいと思い始めていた。





[*Ret][Nex#]

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