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さよならの香り
-キミが思い出になる前に-



◇全3p完結(?)
◇バッドエンド

簡単な人物紹介

・菱屋 ミチル(21)
 (ヒシヤ ミチル)
 大学生アルバイト
 ノンケ
 11時-6時,時給1200円

・北澤 祥史(46)
 (キタザワ ヨシフミ)
 コンビニ店長
 ドM
 妻子持ち



深夜のバイト―…

酷く忙しい真夜中は人件費削減のためいくら納品が来ようとボク一人で7時間回している。オープンして三ヶ月目、そろそろ苦情の一つ来ても良いんじゃないかと思うくらいレジで5人以上並ぶのも当たり前、客に文句を言われるのも当たり前だ。

ストレスばかり溜まるシフトだが、決めている本人(店長)に会えなければ文句が言えない。午前中に居る彼は、ボクと真逆の時間帯に居る人のため会ったことがあるのは二度ぐらい。だから結局何も言えず時だけが過ぎる。



「いらっしゃいませ…」

「お疲れ様、菱屋君。」

「って、店長!?お、お疲れ様ですっ!」



そんなことを考えながら深夜3時40分、ちょうどパンの納品をチェックしていた時。久しぶりに見たためあんまり顔を覚えていなかったのだが、このコンビニの店長がやって来た。

彼の独特な風貌…オシャレに疎いのかワックスも何も使っていない髪は寝癖がついていて、服もかなりダサかった。だけどキリッとした瞳はとても素敵で、魅力的な壮年の男性像がピッタリハマる顔だなと思った。



「久しぶりだね、もう仕事は慣れたかい?」

「えっ、えぇ…まぁ、」

「そう、それは良かった。」



どんな顔で話せばいいかよく分からなかったから適当な相槌のみだけになってしまう。これじゃ反抗しているみたい、久しぶりに会った店長がせっかく優しく聞いてくれたのに、失礼なことをしたなと思って必死に場を盛り上げた。



「珍しいですね、北澤店長がこんな時間にお仕事なんて。」

「うん、実はね…」

「はいっ、」

「菱屋君、君に大切な話しがあって今日は来たんだよ。」



さすがとも言うべきか、店を一軒任されているだけあって北澤店長はやはり人を動かす何かがあるなと感じた。

良い意味で力強い、悪い意味で人を威圧する。見えないオーラが凄まじい人だと思った。



「あのね、」

「はいっ…」

「私は結婚しているんだよ。子供も居て、二人とも育ち盛りなんだ。」

「えっ、えぇ…」



しかし、バックルームに行くとどうでも良い話ばかり。下を向きながら自分が置かれている立場を淡々と語りはじめたのだ。

正直、子供の名前がサエだとかショウノスケだとかボクにとってはどうでもいい。さらに奥さんとは月に5回程度セックスをしているなんて重ねてどうでもいい。



「すまない、菱屋君…」

「っ、」

「ずっと、ずっと前から…君のこと、好きだったんだ。」



突然の愛の告白に北澤店長がボクを壁に押しつけてキスするまで3秒前、力強く握られた手首を上に掲げられてねっとりとした舌が口内に這って来た。

貪るようにボクの隅々を味わう店長は何故か涙を流して泣いていた。とても苦しそうな顔で噎せるぐらい長いキスをする店長の顔をボクは多分、初めてはっきり見たと思う。



「菱屋クンっ…、」

「やだっ、店長っ…!」

「・・・。」



キス以上にも積極的でぐんぐん前に進んでくる北澤店長をボクは必死に止めた。ボクより体格もよく背が高い彼に組み敷かれたりでもしたら到底敵わないと分かって忌避した。

でも、己の欲望を剥き出しにズボンを脱いだ北澤店長はビンビンに勃起した巨根をボクに見せつけ、口で嬲るよう命令してきたんだ。



「ミチルっ、ミチルっ…」

「や、やだっ!北澤店長っ、気を確かにしてくださ

「こんな状況で気を確かに出来る奴がどこにいるっ…―お願いだ、菱屋クン。一度でいいんだっ、一度だけっ…、本当に一度だけっ、お願いだっ、もう…もうこれ以上、苦しい思いはしたくないんだよぉっ…、」



大人気なく叫び啜り泣く今の北澤店長に魅力的な壮年の男性像のイメージは無かった。寧ろ、ボクはそこらへんに転がっている汚らわしいゴミでも見るように一回り以上年上の彼を見下していた。

時計の針は4時7分。
5時前には新聞配達が来て店内に朝刊を並べなきゃいけない時間になる。その前に北澤店長が今すぐ帰ってくれればいいのだけど。

無駄に滾った赤黒い股間を目にした瞬間、ボクの末路は見えてしまっていた。





[*Ret][Nex#]
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