LOVE ME/Sklave 7days
俺には好きな人が居る。
かわいくて、抱きしめたくなるくらい繊細で壊れそうな俺の愛しい人。
だが、向こうは全く気づいて居ない。
むしろ俺は嫌われている立場なのだ。
初夏にしてはかなり暑いオフィス街。
クールビズ化が進みワイシャツ一枚で颯爽と歩く人が増える時間帯。昼時になると多くのサラリーマン達が財布片手にお気に入りの店へ足を運ぶ。
しかし俺は誘いを断りデスクで仕事をこなしながら手作り弁当を開け頬張る。
毎日そうだ。
理由は特に無いと言いたいが人間いろいろだ。
彼に誘われたら行くかもしれない。
でも俺には仕事のこと以外話しかけても来ないし、明らかに避けているから。
今日も関わりなく虚しく終わる。
「浅井!今日はお前の大好きな寿司行くんやけど、いかへん?」
「あ、ありがとうございます。でも俺、弁当あるんで。大丈夫です。すいません。」
「なぁーん、かわいくないなー浅井は。優しい上司が誘ってんねん。早く来ぃや。」
「あ、はぁ...」
こんなふうに半ば無理矢理連れ出される時もある。課長に言われると敵わない。
だから仕方なく重い腰を上げ、カバンから財布を取り出す。どうせあの人はケチだから自分から誘うくせに1円も奢ってくれないのだ。
「課長!早く並ばないと大変ですよ!」
「お、おぅ!かずくん、ありがとう。浅井も行く言うてるから一緒に行ったてな!俺が先に並んどくから!」
「え、浅井さんも...?」
やっぱり。
こうなることはわかっていた。
眼が大きく揺れ、不味そうな顔でちらりと俺を見る。
俺の愛しい人。
桜庭和希は俺のことが最高に苦手、いや、嫌いなのだ。
課長はそんなこと知らないから桜庭に俺を任せたけど、俺だって嫌だ。そんな態度をされたら、悔しくて哀しくて。
確かに今までの行いは相当酷かった。
でもそれは全て成長して欲しい願いを込めて指導しただけのことだし、嫌いを隠すためにしてしまったことでもある。
それなのにコイツは、桜庭和希は、これっぽっちも俺を、理解しようとしない。
「桜庭、無理をしなくていい。俺のことはほっといて。先に行け。」
「え、あ。でも課長が...」
「最初から行く気など無かったんだ。構わないから、間に合わなくなるぞ。」
「あ、そ、そうですか。」
強がりを言って冷や汗をかいた愛しい人を見送る。もう無理に関わろうとしなくていい。嫌われてるのはわかっている。
それでもどこかで少しでも、一ミリだけでも俺を好きであって欲しいとも思う。
「バカだな、俺は。」
1人ぼっちのオフィス。
せっかく立ち上がったが出番なく。
自分で作った弁当を開けご飯を頬張った。
ーかみさま、
神様なんか信じたことないけど、一度でいい。一度でいいから彼を抱きしめさせてください。
そしたらこの想いを諦めて違う途へ進みます。もうこれ以上は望みません。
一度でいいから、一秒だけでも俺に幸せをください。
☆☆☆☆
その一週間後、彼に神の御加護が!笑
ヨルヒ
[*Ret][Nex#]
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