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「キタノクン一筋の黒薔薇もガッカリやな。いろんな男の子とエッチしまくって、別にキタノクンじゃなくてもえぇみたいやね。」
「ちがう、」
「見分けもつかんってことは、あんま興味無いっちゅうーことやん、」
「違う!違うっ!!!」
いちいち棘のある言い方で白藤を責めて貶める五百雀氏はしたり顔でボクを見る。きっと白藤はボクの気持ちなんて知らないだろう。犯罪者に愛されて愛されたいと願って、自分自身愛してしまったことなんて。
実際そんなこと有り得ないし気持ち悪い、どうしたら愛と呼べるのかボクにだってわからない。
「そんなっ、キミだったら…どうしてっ…忘れようと必死に生きてきたのにっ、」
「っ、黒薔薇…」
「このとおりっ…俺はこんなに零落れた、結ばれないのならどうでもいい。溜まる欲望を晴らしてずっとずっと、これからも死ぬまで、なら消えればいい…俺は…ずっと、」
言葉の意味が全く分からない、身体を震わせて罪を纏う白藤は小さく見える。
彼は犯罪者だけど犯罪者じゃない。恐怖を植え付けられたのは確かだが、さらに大きな温もりがあった。
「分かったならさっさと帰れ。」
「やっ!キタノクン!!っ、五百雀さんっ…俺、キタノクンを、もう一度っ…、」
「はぁ??よぉわからんな、犯罪者。サキちゃんに恐怖を植え付けといてまだ言うんか。」
床に泣きじゃくり這い蹲る白藤は頭を何度も下ろしボクをくれと五百雀氏に懇願した。
そんな様子を冷たい目で見つめる五百雀氏はボクの腕を掴んで離さない。先程よりその掴みはキツくなって鬱血してしまいそうなほどだ。
「もうっ…キミじゃなきゃ、」
「いい加減にせぇへん?死にたいんか?」
「ずっと、ずっと好きなんだ、キタノクン、」
「あ…っ、えっ、」
「サキちゃんは黙ってて。白藤さん…いや、東雲社長。ウチとの契約はもう終わりです。これから店にも立入禁止で、二度とサキちゃんに構わんでください。ほな、」
事務所の入口から出てきた厳ついボディーガードのような男に引かれた白藤は叫びながら部屋を去る。
きっと白藤へ他にも話さなきゃいけないこと、触れなきゃいけないこと、大切にしなきゃいけないこといっぱい、僕らにはいっぱいあるはずだ。
それでも狭い所に幽閉されたボクは強く腕を掴まれたまま、彼を追いかけることが出来なかった。
◆
ぼーっと天井を見つめるボクの冷たい身体に熱い舌が這う。五百雀氏は黒薔薇と引き離したことにご満悦のよう、反応しないボクの身体を隅々味わっていた。
何も感じないボクはされるがまま、生まれて二人目の侵入を受け入れる。
『誰のでもない、キタノクン…俺、こんな気持ちになったの初めてなんだ。自分だけのモノにしたいって思ったの、』
『最初で最後になるよ。俺だけが許されるんだ、君を抱きしめるのは。』
独占欲が滲み出た5日目あたり、確かこんなことを言われたなぁと思い出す。
でもそんな約束も守れない。本当は強く抱きしめてずっと傍にいて欲しいのに。
「嫌だっ、黒薔薇…っ、」
「サキちゃん?」
「五百雀さんっ…俺、やっぱり無理です。最初から、俺の身体も、心も…あの日からずっと、ずっと黒薔薇に奪われたんです。だから、すいませんっ。本当に、」
「・・・・。」
涙ながらに訴えたボクは緩められた五百雀氏の腕を解いて駆け足で飛び出す。
確実に彼を愛していることも、一緒に居たいことももう誰に言われなくとも理解していた。
[*Ret][Nex#]
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