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6時過ぎ、倉庫掃除を切り上げた僕ら新人組はオフィスに戻って帰りの支度。浅井さんの問題発言後、二人へ必死に弁解したため少し疲れた。

課長も武田さんも、もちろん浅井さんも居ないオフィスはガランとして暗く暑い。姫宮と村雨も帰ってしまい、僕もカレー作りのため急いで浅井さんの家へ帰ろうとした時だった。



「お疲れ様、桜庭くん。」

「へっ、」

「…そんな嫌な顔しないでよ。今日は君に用があってね、」



スラリと伸びた身体が目の前に現れて思わず僕は眉間にしわ寄せ、とても嫌そうな顔をしてしまう。

そんな僕の様子に気付いた風間さんはくすくす笑いながら僕の肩を抱き、誘惑するよう甘い言葉を囁いた。



(浅井の秘密、知りたい?)

「はい?」

「教えてあげようか、気になるでしょ?」

「っ、あ…あ、」



意味深な風間さんの発言でこれは罠であるとすぐ分かったけど、浅井さんの秘密を僕は知りたいと強く思った。

単純に浅井さんは男が好きなのか、それとも…―?
日常を通して分かってきた浅井さんの気持ちに好奇心が勝り僕は嘲る風間さんの後ろを追い掛けて行った。









倉庫の鍵を閉めた風間さんの異様な動きを見た僕は気にしないでと宥められ奥へ連れて行かれた。

僕らが掃除した場所よりも奥、社員旅行で使ったおもちゃやカメラが並ぶ棚で風間さんは立て掛けてあったアルバムを手に話しはじめた。



「このアルバムにはね、企画や経理、営業で行った社員旅行の写真が収められていて、」

「はい…」

「君も参加していたはずなのに君の姿はどこにもないね?不思議に思わない?」



風間さんの言う通り、三課のメンバーが写った写真はいくつもアルバムに収められているのだけどどの写真にも僕の姿は無かった。

そして次のページにも、その次も不思議に抜かれたスペースを指差しながら風間さんはお腹を抱えて笑いはじめた。



「君はまだ分からないの?」

「え、」

「全部浅井の仕業に決まってるだろ?浅井がわざわざここの整理をしに来ていたのも、君を守ろうとするのも全て感情。浅井はゲイでも何でも無い。さて、どうしようか…桜庭くん。」



白く開いたアルバムを優しく床に置いた風間さんは僕の頬を撫でると紅い唇を皮膚にピッタリ押し当ててふぅーと吐息を漏らした。憧れの風間さんにキスされるなんて本当はとても嬉しいことのはずなのに何故か嫌で仕方ない。



「だからと言って…浅井を好きになってはいけないよ、」

「っ…、」

「君は私が好きだから。心変わりなんて赦さないからね、」

「やっ!か、風間さんっ、」



強引に肩を掴まれた僕は次の瞬間、思い切り尻を床に付かせ風間さんに抱きしめられていた。半端無い力強さに抵抗することも出来ないまま、ただ荒く息を吸う風間さんに恐怖を覚えた。

比べる道理は無いのだが、浅井さんは強引の裏に優しさがあっていつも僕のことを考えながら何事にも慎重に進めてくれる。不器用な僕にとってかけがえのない存在になっていた。



「倉庫は明日の朝まで開かない。係りの人に頼んだから。」

「か、風間さん…何で、」

「奴隷のくせに良い想いをした罰だよ。桜庭くん、君は嫌いな上司にさえ犯されて感じちゃう変態さんだから…ね、」

「あ、やめっ…ゃんっ!」



言葉巧みに僕を犯す風間さんは浅井さんとは違う、細く冷たい指で僕の股間を弄り不気味に微笑む。

ずっと風間さんにしてもらいたかったことが現実となっても今この瞬間、心から嬉しいとは思えない。一度経験があるからか、浅井さんの温もりが心地好い僕は目に溢れんばかりの涙を浮かべていた。






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あきゅろす。
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