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SIX




7/28 (WED)

さわやかなフローラルの香りのふかふかベッドで眠っていた僕は隣で眠る浅井さんの綺麗な身体と横顔の虜になっていた。上下に揺れる厚い胸板がとても魅力的、瞳を隠す瞼だって太めの眉だって全て完璧で美しい。

ただ呆然と浅井さんの姿に見とれていた僕はこれはいけないとハッと目を覚ましベッドから降りて顔を洗いに行こうとした。



「桜庭…」

「はいっ、」

「おはよう、昨日は悪かったな。添い寝のサービスまで、」

「い!いえっ!お熱は大丈夫ですか?」



頭をポリポリかきながら半身起こした浅井さんはニッコリ笑って僕にお礼を言った。

何だか雨が降りそうだ。
あの浅井さんが優しいなんて、昨日から大分キャラクターが変わった気がする。



「お前のおかげだな。さらに元気になった、」

「あ、そうですか…」

「休んでなんかいられないからな。早くご飯食べて会社に行くぞ。」



朝から笑顔で機嫌が良さそうな浅井さん。僕はリビングルームにある椅子に座り朝ごはんを作ってくれる彼を見ているだけ。

息子と親のような間柄で不思議だけど、前に嫌でやってるわけじゃないって言ってくれていたしこれはこれで良いんだとも思う。

でももし、この生活が終わってしまったら僕は、浅井さんはどうなるのだろう。一応お互いにカラダは見たし、アレはしてなくても怪しい関係を持ってしまっている。

普通に同じ職場に居ていいのだろうか。未来が見えない。



「桜庭、今日は武田も俺も人事会議で席を外しているから、課長の指示通りに動くんだぞ。」

「人事会議?」

「ああ、一応俺も武田もヨルヒに来て経つからな。どちらかの配属が変わるかもしれない。そういう会議だ。」

「な、なるほど、」



でもかと言えば浅井さんが居なくなったらさみしい気がするし、なにか物足りない気もすると思う。僕は入社当時からずっと教育係の浅井さんの下で働いていて、いっつも謝られていたけどピンチの時はいつも助けてくれていた。

課長より頼もしくて、怖いし課題もいっぱい出すけどそれもすべて僕のためと思うと気持ちが変わる。



「ここだけの話だがな…武田は商品開発に行きたいらしい。まあ、入社当時からずっと言っていたからな。やっと転機がくるかもしれないから応援してやってくれ。」

「あ、はい…あの、浅井さんはどうなるんですか?」

「ん?俺か?俺は三課がいいんだ。前も誰かに言ったが課長があれじゃ俺が居なくちゃ大変だからな。」



ごもっともなことを言ってご飯を食べ終えた浅井さんはクローゼットからシャツを取り出して着替えを始めた。

その言葉にちょっと安心した僕はこの一週間が終わっても浅井さんとは良い関係でいられるだろうと安易にも確信していた。









オフィスに行くとパソコンに向かってボソボソと何かをつぶやく武田さんがいた。

武田晶(タケダアキラ)さんは浅井さんと同期で同じ大学同じ年。友達では無かった真逆の二人がまさか同じ課に配属されるとはお互い思っていなかったらしい。

奥さんと娘さんが居て立派にパパをしていると言う噂と独身貴族で休みの日はもっぱら引きこもりと言うこれまた正反対な噂が流れる生活間0な人だ。



「わたしはいぜんよりしょうひんかいはつにきょうみがあり…」

「武田さん、おはようございます!」

「こんかはつばいのふるーりっしゅのしあんもじつはわたしがひそかに…」

「た、武田さーん…」



ワードに書かれた原稿を必死に読み上げる武田さん。

今日の人事会議のことで頭がいっぱいの武田さんへは挨拶も届かないのか、邪魔はしてはいけないとその場を去ろうとしたその時、



「桜庭、首にキスマークがついたるよ。ふふふ、昨日は無かったから夜、デートでもしたのかな?ふふふ、」

「え、」



さっきまで僕に気づかず原稿を読んでいたくせにくすくす笑いながら僕の首を指差し、キスマークを指摘。

確認すると身に覚えの無いキスマークが左首にひとつ。犯人はまだオフィスに現れていないが他の人にバレる前に急いで絆創膏を貼って隠した。





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