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浅井さんは黙って自分のモノに手を当て目の前で苦しそうな表情を見せた。僕を見つめながら息を乱す浅井さんの姿はあまりにも情けなく、弱々しかった。

黒いスラックスから大きく盛り上がるそこに僕が手を触れたらどうなるのだろう。何をしたらいいのか全く分からずただ、苦しそうな浅井さんを見ていることしかできない。



「さくらばぁっ…」

「ひっ!」

「俺がこうなったのも全部っ、全部お前の所為なんだからな、」



ぐっと声を漏らしながら歯を食いしばり必死に高まりを抑えようとする浅井さんの顔は赤く、目の焦点が定まっていない様子。

ふらふらと身体を揺らし僕の胸元に沈んだ浅井さんの身体は普段より熱くおかしかった。



「浅井さん?!」

「さくらばあっ、」

「ももしかして浅井さん、熱があるんじゃないですかっ?」

「っ、んなわけあるかっ…」



異様な身体の熱さに気付いた僕はすぐ浅井さんのおでこに手を触れ、熱があるか確かめた。しばらく抑えても熱さは引かないし、目もとろけていたので絶対に熱がある。

そう判断した僕はクーラーボックスに入っていた試作品のフルーリッシュを脇腹とおでこに当て、簡単に手当てをした。



「っ、冷たい…」

「すいません浅井さん、でも我慢して下さい。落ち着けば大丈夫ですから…」

「は、料理は出来ないくせにこういうことは平気なんだな。」

「ま、まぁ…はいっ、」



病気でもいちいち厭味な浅井さんはふーっと落ち着いたため息をついてそのまま横になった。

熱があるのに反応してるなんてすごい身体だ、さすがだと感心していたのだけど、子供みたいに僕の手当てを素直に受けている浅井さんが少し可愛いなと思えた。



「料理は…出来なくても、」

「んっ?」

「お前なら…何でも良いんだがな、俺は。」

「えっ?」

「…鈍感すぎるな、お前はホントに、」



熱で頭がいかれたのか、珍しくこの僕を賞賛した浅井さんはとろけた瞳で僕の頭をよしよしするとすぐ目を閉じてしまった。

見えないように目を伏せていた彼の思いがずっと僕に向いていると言う保障はどこにもないのに。その時から、その前から何か違う浅井さんの思いにもう僕は気づいていた。









百瀬課長の指示で体調の悪い浅井さんを早くお家に帰し、僕は大量に残された仕事を一人で一生懸命やった。

いつのまにか5日目、実は3日目以降風間さんから何も命令されていない僕は全て成り行きで浅井さんとエッチなことをしちゃっている。だから昨日も今日も彼の家に帰らなきゃいけない決まりは無い。



『おかえり、』

「た…ただいまですっ!浅井さん、お熱下がりましたか?」

「まぁ、多少はな。」



なのに僕が帰った場所は浅井さんのお家。熱がある浅井さんのためにお水と栄養ドリンクを渡しにやってきたのだ。

だけど実は違うことを期待しているなんて…―そんなことは口が裂けても言えない。



「ヨルヒフードの栄養ドリンクは朝お前にやったのが最後だったからな…ありがとう。」

「いえっ!お、お気になさらずたくさん飲んで下さいっ!」

「ああ、分かった。」



実は浅井さんとの生活が依存している僕、熱があるのにも関わらず変なことばかり期待してきっと余計浅井さんを困らせてしまう。

今夜もここに居ることが許されるだろうか。変事したのは日常だけでなくココロもだった。





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