◇
白いふかふかの布団で眠っていた僕は銀髪の美しい人にキスされて目を覚ました。
彼の優しい微笑みに気持ちが良くなった僕は自ら進んで背中に手を回し、侵入した艶めかしい舌に答えた。すると彼は小さな声でこう言った。
『まさかチューハイ一口でこんな酔うとはな。』
思っていた以上に低い声だったが、気にせず。僕にたくさんキスしてくる彼はその熱い舌を首筋に這わせ、身体をゾクゾクさせる。
大きな手の平に包まれた頬がもっと熱く唇を焦がして息が続かないくらい長く口づけを交わしていた。
『ん…はぅうっ、?』
「は、やはり俺が居なかったら大変だったな。酔うとキス魔になるなんて…厄介だ。」
「え…、」
夢現の僕の目の前でにこやかに微笑んでいたのはナント、大好きな風間さんではなく鬼上司鬼畜悪魔冷血人間の浅井宏紀だった。
現実と夢の狭間でぼんやりしていた僕は完璧に目覚め、抱きしめられていた身体をバンと突き退けた。
「おい!せっかく介抱してやったのに失礼だな。」
「ししし…失礼なのは浅井さんじゃないですかっ!こんな昼間から…しかも会社の車で破廉恥ですっ!」
狭い車内でエッチなことをしようとしていたのか、僕のネクタイを片手に掴んでいた浅井さんは僕が文句を言ってもどっしり構えていた。
突き放しても狭いから密着しちゃうし、キスされたからかお酒を飲んだからかちょっと吐き気がする。
「桜庭、反応してるな、」
「そそ、そんな、ああ、
「大丈夫だ。人は居ないし…」
白昼堂々、キスされただけなのに反応してしまった僕。昨日の夜に与えられた感覚が忘れられずまた浅井さんを求めている。
それなのに嫌な顔一つせずそこを優しく撫でて、耳に何度もキスをされると全部が気持ち良くて飛んじゃいそうになる。この感覚は浅井さんからしかもらえないんだ。
「ふむむっ、」
「ああっ、お前っ、」
「んんっ…あしゃいしゃんぅうっ、んん、」
僕を犯す浅井さんはふぅふぅ吐息を漏らし、込み上げる何かに耐えている様子だった。よく分からないけど、と言うか見て確認すればいいのだけど浅井さんの下もきっと反応しているに違いない。
「ふっ、」
「わああっ!」
「…くっ、」
「んっ…あ、っ、だめえ、そこ、」
突然、先をクリクリっと指でなぞる手技に変更されまたすごい快感がこみ上げてくる。僕のおでこにキスする浅井さんは僕の胸にまで手を当てて弄りはじめた。
微妙にいぢられくすぐったくて身を捩るんだけど、車は狭くて全然動けない。
「あ!あ、あああっ…」
「今回は我慢しろよ。早漏なのは十分承知だがな、」
「んんっ…浅井さん、もぉ帰りましょうよぉっ…、」
僕が逃げようとしたってこんな身体のままじゃ逃げられないし、分かってて触って来るなんて本当優しさの欠片も無い。
掴まれた先を人差し指で穿られて覗いた胸元にもキスされて身体が熱くとてもおかしいんだ。
「桜庭、」
「ううっ…」
「随分我慢してきたがやっぱり耐えられそうにない。お前と、したいっ、」
「んっ…え、でも、浅井さん、大きいからダメって…」
「・・・。」
いっつも傲慢で一々許可を取るような人じゃないのに…真面目な顔で率直に言われて少しドキッとしてしまった。
きっとダメと言っても強引に挿れられちゃうなら抵抗しないんだけど、冷静に見つめてくる目は真っ直ぐでさっきまでの横柄な態度は消えていた。
「お前が嫌ならこれ以上はもうしない。」
「えっ…?」
「俺はお前と同意でしたい。そうじゃなきゃ、そうじゃないと意味が無い気がするんだ。」
大人しく俯いた浅井さんがぽつりと小さな声で言った言葉は僕の心に届いて、だんだん分かってきた彼の気持ちにどうすることも出来ずに居た。
ただセックスしたいだけならこんな扱いするはず無いし、気持ちを確かめるなんてまどろっこしいことはしないはず。きっと浅井さんは何か違うものを僕に求めているのだろうと自意識過剰にもそう思った。
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