THREE
7/25 (SUN)
『浅井さん、お届け物です!』
ピンポーンとチャイムが鳴る音に起こされた僕は早く出なければと思い、小走りで玄関へ向かった。
パチリと目覚めた瞬間、自分の家と違う配置に戸惑いはしながらも、扉を開けてニカッと笑顔の金髪配達員と目を合わせる。
「おはようございます!ここに、浅井さんのサインをお願いします!!」
「は、はいっ!」
玄関の左側、靴箱の上に置いてある時計で曜日と日付を確認。なるほど、今日は日曜日で休日か。だから僕はこんなラフな格好で居るのかな?それにしてもこのパジャマ大きいなあ…ダボダボだよ、なんて。
昨日の夜の記憶も断片的にしか覚えて無くて何故ココに居るのかはっきり覚えていない。
「じゃあ、頑張って!」
「へっ?」
「ありがとうございました!」
笑顔の配達員は僕にガッツポーズを見せ、げらげら笑いながら帰って行く。
何を頑張れなのか、バカにでもされたのか。首を傾げながらダンボールを床に下ろした。
かなり大きなダンボールなのにとても軽い。
宛名は浅井宏紀…
贈り主はシグナルさん…
中身は衣類…
通販か何かだろうな。
僕は荷物を端に避けて置き、中身を気にしながらも顔を洗うため洗面所へ向かった。
まるで自分の家のようにのんびりした朝を迎えているが、ココは自分の家じゃない。嫌な雰囲気漂う浅井宏紀の家だ。
もちろん居心地はとっても悪い。だけど僕の家より大きくて広く、何より立派なのがムカつく。寝室とリビングが別室なんて、僕の家なんかキッチンと寝室がすぐ隣なのに…
「ぎゃっ、何だコレ!」
顔を洗っているとリビングから浅井さんの低い叫び声。
気になって急いで駆けていくと、中身を見ながらニヤついている浅井さんの姿があった。
「おはようございます…浅井さん、どうかしましたか?」
「お前は…こんなことまでするのか?」
くすくす笑う嬉しそうな浅井さんにそう言って渡されたのは達筆な字体で書かれた浅井さん宛ての手紙だった。
浅井氏へ
彼に着せてください。
使い方は貴方次第、あとはご自由にどうぞ。
内容物
TVアニメ,ごほーしラブリ
ラブリちゃんなりきりセット
シグナル
「な、なりきりセット?」
声を裏返し視線をダンボールへ送ると中には綺麗な純白のフリルがついたエプロンと、黒のワンピース。オプションに猫の耳がついているカチューシャと銀のキラキラしたステッキ、黒の網タイツが梱包されていた。
「そっ…それは、メイド服ってヤツじゃないか?」
「えっ、!」
「一時期かなり流行っただろう。秋葉原周辺でこういう服装をした女性が迎えてくれる喫茶店とかな、」
「・・・。」
僕をどこまで貶めたら風間さんの気は済むんだろう。
女性物の服をこの人の前で着るなんて絶対にありえないよ…
「まるで罰ゲームだな。早く着替えて来いよ。」
「いやっ…これは、そのっ無理です…すいま
「はぁ?そっそもそも…一週間よろしくとお前から言い出したんだ。べ、別に着なくてもいいが、それじゃ…話がすっ、進まないだろう?」
浅井さんの言うのは『話』じゃなく『行為』じゃないだろうか?それに浅井さん…少し照れてるのかな?顔が真っ赤だ。
「わ、わかりました。」
「当たり前だ。早くしろ、」
何だかよく分からないオーラが凄まじくある彼の希望通り、僕はトイレに向かった。
そこで着替えろとか言われたらどうしようかと一抹の不安があったのは…
心に秘めておこう。
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