愛を… 17 もう頭が着いていかなかった・・・この人は何を言ってるんだ? 俺には分らないよ・・・ 『だけど私たちはあの子を嫌いなわけじゃない、疎ましく思ってるわけでもない。とても大切に思ってる。可愛いあの子をなぜ嫌いになれる?私はあの子の親だ。愛していないはずがない・・・ けどその気持ちさえもあの子には届かなかった。当たり前だ・・・だけど、それがとても哀しくてな・・・コイツはあの子が出て行くと私たちに言って部屋から出て行った後泣き崩れていたよ。私も泣きはしなかったがとても哀しかった。自業自得だと笑ってくれ、お前たちが招いた結果だろ、とな』 ああそうだよ・・・俺はずっと貴方たちは俺のことを嫌いなんだと思ってた だって普通そうでしょ?自分に興味を持ってくれない親に自分は愛されているんだってどうやって思えっていうの?そんなの無理に決まってるじゃないか 俺は一度だって思ったことは無かった・・・二人が俺を愛してくれてるなんて・・・思えるはずが無かった けど今・・・あの人はなんて言った?愛していないはずがない・・・ってそう言った? 聞き間違いなんかじゃなくて? それに泣き崩れたって・・・俺が部屋を出た後・・・そんなの全然気付かなかったっ 『あの子が望むのなら私たちはもうあの子に会おうとは思わない・・・しかしあの子が許してくれるのなら・・・あの子をこの胸に抱いてやりたい・・・お前の親はちゃんとお前を愛しているんだと、教えてやりたい・・・』 俺は・・・“僕”はあれ以上傷つくのが嫌で、ずっと向き合おうとはしなかった “僕”も逃げてたんだ・・・あの人たちから “僕”は嫌われてるから、だからあの人たちの迷惑になることはしちゃだめだって、早く家から出なくちゃってそればかりで・・・“僕”は・・・ 「なぁ馨・・・」 それまで黙ってた帝が俺の頭を撫でながら、それでも画面に目を向けたまま俺を呼んだ・・・ それに答えることが出来なくて、ただ視線だけを帝に向けると、帝は俺の方を向いた 「昨日お前は俺に全部言ってくれた。お前の過去、気持ち・・・俺は嬉しかった。俺にちゃんと向き合ってくれたんだからな。けど、俺は昨日よりももっと嬉しいんだ・・・なんでかわかるか?」 分らなくて首を横に振った・・・ なんで今のこの状況で昨日よりも嬉しいのかさっぱり分らなかった 「それはな、俺の愛しいお前はちゃんと両親から愛されてるから・・・どんなやつから愛されなくても親が愛してくれてる。それがどれだけ嬉しいことか・・・ましてや嫌われてると思っていたならなおさら幸せなんだ。俺はお前が幸せですごく嬉しい」 嫌われてると思って傷つくってことはつまり、その人たちに愛されたいと思ってるからだろ? その通りだよ・・・なんでこんなにもあの人たちのことで心が痛むのか・・・それは愛して欲しいと願っていたから ずっと思ってた、愛されたいと・・・愛してくれないのなら、なんで生んだんだ、と けど俺は勘違いしてたんだね・・・俺は、あの人たちにちゃんと愛されてたんだ―― ポロポロと流れ落ちる涙を拭うことはしなくて、両手で帝にすがりついた 「みかどっ俺・・・っ俺」 「うん」 「あの人たちに、謝りたいよぉっ」 ごめんなさいって ちゃんと愛してくれたのに逃げてばかりで向き合うことをしなくて、ごめんなさいって 流れ続ける涙を止めるように帝が何回も目にキスをしてくれて 優しく抱きしめてくれた 「ああ、俺はお礼を言いに行きたいな・・・お前を生んでくれてありがとうって だから、会いに行こうあの人たちに」 俺も謝ってお礼を言いたい、俺を生んでくれてありがとうって・・・一瞬恨んでしまったけど、俺を好きなように生きさせてくれてありがとうって言いたい 二人が俺に自由をくれたから俺は帝に会えたんだ・・・掛け替えのない人に出会えたんだから (会って、謝ってお礼を言ったらいっぱい言いたいことがあるんだ・・・話したいことが山ほどあるんだ・・・学校のこと、友達のこと、生徒会のこと、ちゃんと話しに行くから・・・ね?父さん、母さん) [*前へ][次へ#] [戻る] |