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cheapcheap endroll※(青益)
※首絞めたりしてます。
※最後の方に若干の暴力表現があります。
※大丈夫な方のみどうぞ。














青木は電気のプルスイッチを引っ張った。
辺りが明るくなる。益田は眩しさに反射的に目を閉じた。
「そうやって目を閉じてりゃいい」
「え?‥‥っ」
はっとして一瞬で目を見開き、離れようとする益田の腕を取って引き寄せる。
「‥‥どういうつもりですか?」
怪訝そうなその目に自分を映し込ませるようにして青木が益田の顔を覗き込んだ。
「後ろめたいですか?僕とこういう事をするってのは」
───明るいところで。
その一言で、益田は自分が今置かれている状況を再確認する。周りが明るいという事は、はっきりと青木の姿が益田に見えるという事だ。益田に見えてしまうという事は、つまり。

益田はこれから青木が何をしようとしているのかを理解した。
「あ‥‥青木さん、そんな事をしたら僕だけじゃなくて、あなたもタダじゃ済まない。怪我すんなぁ、あなただって同じだ、だから」
「だからやめて欲しいって?」
益田の言葉尻に被せて言い、挑戦的な目付きで青木が見据えてくる。その目の奥にはいつもの侮蔑するような光がちらついている。いつもよりも強い光だ。軽蔑するような目の色の中に自虐的な色も混じった複雑な色を湛えて青木は益田の首元をつ、と指先で触れた。
ぞくりと鳥肌が立つ。
「あ‥‥っ」
「目を閉じていたらいいでしょう?」
電球の光に反射する青木の黒い瞳が、益田の瞳に近づく。
「っ‥‥、」
指先が滑り徐々に手の平を押し当てられる。首に柔らかく両手を添えられ、唇が重なった。
益田はどくどくと鳴り始めた心臓に煽られるように不安を増大させた。

益田の細い首に巻き付いた青木の指が皮膚の下の脈動を捉えた。
「‥‥青木さんっ」
唇の隙間から益田の声が漏れる。不穏な青木の気配を感じとったのか心許ない声だ。
妙なところで勘が良いのは益田の特徴の一つだが、今はそれが滑稽で仕方ない。青木は薄く微笑んで更に唇を押し付け、隙間から舌を差し入れた。当然、迎え入れられる訳もなかった。
腕を払おうとしてきたので脈動を感じるそこに力を込めた。動きを止めるようにゆっくりと圧をかけていく。
「‥‥っ!」
益田の目が徐々に見開かれていく。
「あ、‥‥‥あ、はっ」
がり、と益田の爪が手首らへんを引っ掻いた。

元警官なら振り解いてみたらどうだ──?

青木は苦しそうに顔を歪める益田を、ただ見つめた。




どうしてこうなったかなんて、青木の方が知りたいくらいだ。
いつもの様に益田が挑発してきたので自分はそれに乗ってやっただけだ。それだけなのに、ここまでする必要があるのだろうか。
何かあった筈だ。 
そうでなければ人の首に手をかけて締め上げるなんて所業は犯罪者のそれだ。

「僕は好きですよ。青木さんのその犯罪者を見る時と同じ目付きで僕を見る、目」

確かあの時、益田はそう言った。心当たりがあるとすればこの台詞だ。
殺意の有無でいうなら無で間違いないが、これしきの事で人の首に手を掛けて良い理由にはならない。青木には益田を殺害したい動機なんか今の所ないのだ。
続けて益田は、あの軽薄を塗り固めた笑い方をしながらこう言ったのだ。
「そうそう、その生ゴミの腐汁から生まれた蛆虫を見るような目付きの青木さんに、めちゃくちゃにされたいんですよ」

青木は決して犯罪者を人間以下の存在として見た事はない。法を犯す人間には、人間以下と切って捨てるだけでは済まない理由や環境や生い立ちやその他諸々の複雑な事情があるのだ。それを蛆虫などと思った事は一度としてない。
だから、そんな台詞を吐く益田こそ犯罪者以下の蛆虫以下だとその時は思ったのだ。

合ってはいるな。
犯罪者以下の蛆虫以下を見る目付きで益田を見ていた事は。

「本当に、いいんですか?」
「はい。もう、お好きに」
切長の目を三日月の形にし、口を横に広げてそう言った。青木はその益田の胸ぐらを掴んで薄い唇に自分のそれを押し付けた。

‥‥──犯罪者以下で蛆虫以下の君にはお似合いの、不様な格好があるだろうが。

そうして心が冷えていくのを感じながら、青木は腕を伸ばしてプルスイッチを引っ張ったのだ。


「い‥‥っ!」
益田の爪が腕に食い込んだ。
青木の目に、真っ赤にした顔を顰める益田の顔が映った。歯を食いしばった口の端に唾液を溜め、目尻に涙を滲ませ息を荒くしている。
青木は咄嗟に益田の首から手を離した。
「っ‥はぁッ、はっ、はぁッ‥‥!」
その場にへたり込んだ益田は咽せながら息を整えている。足元で蹲り丸くなった益田の背中が激しく上下しているのを見て、青木は漸く我に返った。
「‥益田君‥‥、」
自分の両手を見る。
この手で今、人の首を絞めた。
俺は、今‥‥。
どくんと鳴った心臓の音が青木の頭を冷静にさせる。
腕にちくりとした痛みを感じたので確認すると、数本の赤い擦過傷が筋を作っていた。
よく見る傷だ。
暴力や殺人を選んだ犯人の腕や顔に出来る傷だ。青木はよく知っている。犯人の皮膚が被害者の爪の間に挟まっていて、自分を殺したのはこいつだと教えてくれるのだ。
そうだ、何度か教えて貰った。
その動かぬ証拠が自分の腕と、益田の爪に。

肩で息をしながら益田はうっそりと顔を上げた。
額に垂れた前髪から見えるその目は涙に濡れ、赤く染まった頬も濡れている。汗なのか涙なのか分からないものでしっとりとした質感に肌が色づいている。
それを見た青木はぎくりとした。
これではまるで───。

「悪い‥‥‥今、水を持って来ますので、」
「待って、下さい」
そんな益田から顔を背けて、逃れるように台所に向かおうとした青木のシャツの端を縋るように引っ張って益田は止めた。
「‥‥いい、ですから」
げほ、と咳払いを何度かしつつ、僅かにふらつきながら立ち上がる。青木の肩に手を置きシャツを握りしめて支えにすると、震える指で電気のプルスイッチを引っ張る。カチカチという音とともに辺りはまた暗闇に支配された。

「このまま‥‥しましょうよ、もっと」
ぎゅっと抱きついてきた益田の身体は若干汗ばんで震えていた。首に腕を回して身体を押し付けると、大きく息をついた。はあぁ、ともう一度吐き出された湿った吐息が青木の首筋に当たった。
ぞわりとした。益田の唇がかすかに頸動脈に触れている。そこは先程、青木が益田を締め上げた場所だ。同じ場所に唇を当てている。脈を感じ取ろうとでもいうように。
「ん、‥‥っふ」
抱き着く腕に力を込め、身体を更に密着させながら息を吐いた。益田の中心は緩く立ち上がっていた。それを知らしめるように押し付け、足を絡めて擦り付けた。
「んんっ‥は、ぁ‥‥青木さん、僕は」
益田は熱っぽく息を吐いて身体をぶるりと振るわせた。青木の首元に唇を何度か押し付けながら、シャツのボタンを外していく。はだけた胸元にも唇を押しつける。スタンプでも捺すようにピタリと吸い付いて音を響かせた。

今度は青木が目を見開く番だった。
この男は───。
犯罪者よりも蛆虫よりも得体が知れない。
青木は信じられない物を見る目で益田を見た。
化け物を見る目だった。
あの暴力の後で、何故こんなに欲情しきった行動に出るのか。理解できない。


「‥‥ねぇ、青木さん」
シャツのボタンを全て外し、露わになった青木の上半身に舌を這わせながら跪いた益田は、スラックスのベルトに手を掛けながら呟いた。
「はやく、しましょう‥よぅ」
長い前髪の隙間から覗く切長の目が、どろりとした沼の表面の輝きを放って青木を見据える。暗がりでもわかる。不透明の濁った水を真下に抱えて光るその目は青木を当惑させた。
益田が臍の周りに舌を伸ばして、音を立てて吸い付いた。
「‥‥っふ、」
青木はその柔らかい舌のぬらぬらとした感触に、沼の底の反泥に足を差し入れたような感覚を覚えて小さく息を吐いた。
それから単純にぞわりとした。臍の直ぐ下にあるものが反応する。臍の中へ舌を差し入れて、益田は青木のスラックスのジッパーを焦らすようにゆっくりと下げた。
床に落とされたスラックスが潰れた自我のようで嫌になる。


暗闇に目が慣れ始めて確認できた。
下着の上から益田の長くて華奢な指が青木の性器の形に沿って撫であげている。己の股間の上を蠢めくその様が、布越しの微妙な感覚が、臍の穴に入れた舌をぐねぐねと動かす度にそこから聞こえる湿った音が、情欲を掻き立てる。
イヤらしく動く益田の指にまさぐられる度、形を成して固くなる自身から視線をそらした。
視覚を遮断し上を向き、重い息を吐く。
下腹に益田の柔らかな髪が当たってむず痒い。青木は壁に背を預けてその柔らかさに触れた。
こんな頭のおかしなヤツに、身体を舐めまわされて反応するなんて俺はもう終わりだ。
「‥‥おねがい、青木さんもっと、僕を‥」
「‥ッ‥‥ぁ、」
震える声はじっとりとしていて耳から注ぎ込まれると直接脳を犯されるようで思考力を奪う。青木の世界を覆い隠してしまう。
もう、その事で頭が一杯になる。


下着に手をかけた益田の手首を掴んで引き上げる。両手で頭を掴んで引き寄せ益田の薄い唇に自分の唇を押しつけた。
歯がぶつかって鋭い痛みが益田の唇に走る。
「ん‥っ、ぅ!」
その薄い上唇に噛み付いて吸った。血の味がした。一瞬だけ益田の身体がびくりと跳ねる。細い眉が痛みに耐えるように寄ったが、舌を絡み合わせると直ぐに別の色を額に滲ませた。
「ふ、ん‥‥っ、ん、んはぁ‥‥っ」
びくりと身体を震わせて、押し付けた身体の中心を青木のそれに擦り付けるように腰を動かしている。
異常だ。この男も、自分も。
青木は益田の腰に手を添えてベルトを解いた。それだけでずり落ちそうになるスラックスの隙間から手を差し込んで双丘を手の平で掴む。
「相変わらず頭がおかしいんですね」
益田の首筋に顔を寄せてささやく。
「んぁっ」
びくんと肩を竦めた益田の薄く肉のついたそこに指を食い込ませ、割るように揉み広げた。押し付けられた股間の膨らみを足の付け根に感じながらその素肌に触れていると、ざわざわと胸の奥から何かが這い出してくる。
以前にも感じた事のある、あの感じ。
青木はそんな自分を嘲笑する様に薄らと笑って、そのまま下着ごと益田のスラックスを下げた。びちっと布が避ける音が聞こえた気がする。


「っん、ん‥‥」
背中を壁に預けて座る青木の上に跨って壁に両手を付いている益田は自らのシャツの下の肌着を咥えている。胸元を晒している益田の腰を支えてその身体に舌を這わせた。
「ぅ‥‥あっ」
先程まで益田がそうしていたように、青木は益田の弱い部分を重点的に責め立てた。既に固く立っていた乳首を親指の腹で押し潰して捏ねる度にふるふると震えて、鼻にかかった甘い声を漏らす。青木と自身の腹の間に挟まれた益田の中心から、タラタラと溢れ出る体液が下生えに染み込んでいく。益田が腰を揺する度、その濡れた感触が強くなって青木をぞくぞくとさせた。益田の尻の双丘の間に沿って屹立した自分の先端からも、同じ液体が流れているのかと思うと息が荒くなる。


壁に付いていた益田の手から力が抜けて滑り、青木の肩に落ちた。目線だけで益田を見る。
益田は咥えていた肌着を口から放し、唾液で濡れた唇を舌で舐めた。あの鈍い色をした沼の目を細めて微かに喘ぐ。
肩に置かれていた手が青木の屹立したものを掴む。そのまま、ひくひくと蠢く自分のそこへあてがい青木の先走りを塗り込めるように動かす。細い眉を寄せたまま、益田は青木の上に腰を落とした。痛みによる苦痛なのか早速捉えた快感の一端なのか分からない表情で益田の顔が歪む。余分な肉が付いていない益田の細い腰を掴んで、押し込めるように青木も腰を突き上げた。
「‥‥っ、ん」
ぬっと入り込んでは包み込まれる感触に息を詰める。入り込んだ青木を、きゅうぅと締め付けるようにして更に奥に誘い込むように蠢いた。
「は、うぅ‥ッ‥」
緩く開けた口の隙間から乱れた息を吐いて、熱に浮かされた目で益田は青木を見ている。
微かに笑みの形を作る口元が気に入らない。
笑ってんじゃねぇよ。

お互いが気持ち良くなればそれでいいと益田は言った。この関係はそういうものなのだと。
青木はそれを承知した覚えはない。
これは一方的なものだ。一方的な、ただの性欲のぶつけ合いだ。気持ち良くなどしてやるものか。お前は俺の正気を奪う。
益田と肌を重ねる度、自分の中にあった常識が揺さぶられて粉々にされる。肌を重ねるなんて上品なものではないが、その行為が青木の奥の方にある部分を刺激しているのは間違いない。
まったく、碌でもないものを刺激してくれたな。見たく無かった部分だ。自分の醜い部分だ。人の首に手をかけるような自分など知りたくなかった。

胸の先で勃起したそれに歯を立てる。前歯で挟んで舌先で撫で上げると悲鳴にも似た喘ぎが益田の口から迸った。
「いっ、たァ‥っ‥‥あ、あ‥ァ」
今度は、背を退け反らせて顕になった喉元に噛み付く勢いで吸い付いた。きっと紅く跡が残る。隠せるような場所じゃない。もしもあの人に追及されたら、どんな顔をして言い訳をするのか見ものだなと青木は嗤った。
吸い付いたそこにも噛み付くと、益田の中が途端に締まった。
「う‥‥っ、ぁ」
思わず声が漏れてしまう。青木は勝手に揺れて動くに任せ、腰を突き上げて益田の肩に顔を埋める。そこに歯を立てると益田が甘えた声を漏らした。
「んは──あッ‥‥あ、ん、‥んっ」
青木のその律動に合わせて益田も腰を動かす。
長めの前髪が、ぱらぱらと落ちて汗でこめかみの辺りに張り付いている。やはり益田は、こうして痛みが強ければ強いほど興奮する質らしい。口の端に溜めていた涎を溢れさせ、同じように目からも涙をこぼす。はあぁぁ‥と吐いた息が熱い。

細い眉を八の字に歪め、青木の手を取って重く掠れた声で言った。
「‥あ‥‥青木さん‥、お‥おねがい‥‥っ‥します‥‥っ」  
自分の首に青木の手を添えさせて重ねる。それをぐっと押し付けて、濡れた息を吐いた。
「‥‥締めて、ください‥‥ッ」
淡く涙の滲んだ目が陶酔している。薄暗い沼の表面が揺れる。青木は目を見張る。魅入られてている。そう思いながらも指先に力がこもる。
「く、ふ‥‥っ」
手の平でじわじわと圧をかける。益田の中がきゅっと締まった。
「‥‥あ‥‥ぁ、あ」
ピクピクと痙攣するように細かく体を震わせて己の性器を握る。手を小刻みに上下させて息を荒くした。
「ぁ──っあ、もっと、締めて‥‥、さっきみたいに、してよ‥‥っ」
途切れ途切れに紡がれる言葉は常軌を逸しているはずなのに、青木にはそれが真っ当な哀願に聞こえた。

一度だけ、グッと力を込めた。
益田の喉がクッと音を立てた。
それで終わりだった。
ぎゅっと締め付けられて、青木は益田の中に吐精した。青木が首から手を離した瞬間に、益田も自らの手の中に歪み切った欲を吐き出した。


虚脱感が酷くて頭が回らない。
どくんどくんと突き破りそうな心臓を宥めて大きく息を吸った。あの締め付けられる感覚は、癖になりそうだ。そう考えただけでまた疼き始める。青木はそれに舌打ちをして、足元で体を丸めている益田を見た。
この変態があんな事を言い出さなければ──。
ぐったりと畳の上に丸まって息を整えている益田は一応、生きてはいるようで安堵する。
「益田君」
蹴るわけにもいかず、青木は益田の肩に手を伸ばして揺すった。
「‥あ‥あおき、さん‥‥‥」
畳に額をつけて顔を向けた益田の目はとろんとしていて、未だ夢現の中にいるようだった。
腕を伸ばして青木のシャツを握る。
「‥‥──きもち、よかった‥」
呂律の回っていない口調で言って、力の入らない指先でシャツを手繰り寄せる。微かに震えているその指先を視界から外す。
「あれ、ぼく‥‥すきです」
喉元に紅い跡。
目が慣れた薄闇の中ではっきりと伺える。
陽の光の下ではどのように見えるのだろう。
あの人に──益田の想い人であるあの人に問い質された時、どの様な言い訳をするのか。
しないのかもしれない。
身体をのろのろと這わせて青木の腰辺りにしがみつく。
白いシャツ越しの肩が一層か細く見える。腰から下に何もつけていないので、しなやかに伸びた足が露わになっている。足首が折れそうに細い。シャープなラインを描く頬を腹の上に乗せて目だけを上げて益田は青木を見た。
「ほんとに、死んじゃうかとおもった‥‥」
───気持ち良すぎて。
濁った光を帯びる切長の目を細めて笑いながら、そう続けた台詞を最後まで聞かずに青木は益田を殴った。













end.

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