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碧螺春の宴
白銀の少年の嘆く家族の願いを・2
「大丈夫?」
ずぶぬれになった、水のしたたる髪に手を触れられた。
「寒いでしょ?」
と言って、その人は着ていた上着を掛けてくれた。
「あ、あの・・っ」
「なあに?」
ふわりと微笑まれて、いたたまれなくなる。
「だ、駄目だよ・・っ。これ・・」
上質の布で作られた上着を返そうとする。
だけど、その人は首を振って受け取ってくれない。
「着ててよ。こっちが寒くなるから・・。見ててさ、辛いんだよね」
「・・・あ・・・」
ずぶぬれの体を抱きしめる。冷えた、感触。
「ねえ、君・・今日売りに出される子?」
「え? う、うん・・っ」
こくこくと頷く。
「だったら、俺と一緒に来ない?」
手を差し出される。その手も、この上着みたいに温かいのだろうか?
その手を・・取りたい。
でも、その手を録ったら・・もう「エディス」さんとも、「お父様」とも会えなくなる。
「あの・・ご」
「ねえ。俺寂しいんだ」
その人が俺の前にしゃがむ。この人は綺麗な服が汚くなるのを気にしないんだろうか?
「俺とさ『家族』になってほしいな」
「かぞく・・・?」
何だか、優しい言葉。
「そう、家族。父様、母様、俺もいるから兄様。それにお手伝いさん達」
「お父様・・お母様・・」
「新しい、家族はいらない?」
首を少し傾けて。じっと見られる。
「・・・・・・新しい」
家族。お父様、お母様。
・・・・・・家族は・・変えられるものなの?
家族は、お金で買えるものなの?

エディスさんは本当にいたの?
それとも僕が生み出した作り物の人?
僕は
僕は・・迎えに来てくれない

来てくれないお父様に 捨てられたの?
だから お父様は来てくれないの?



「・・・しい。ほしい、よ・・っ」
もし、僕がお父様にとって、いらない子で。
この人にとっている子なら。
「あなたの、家族になりたい・・」
僕は、エディスでいよう。
エドワード・ティーンスなんて。
ずっと前に・・エディスさんと別れたときに死んじゃってたんだよ。
「うん。じゃあ、おいでよ。絶対にお父様に勝ち取って貰うから!」
ぎゅっと抱きしめられて、涙が零れた。
「俺はドゥルース。君は?」
嬉しかった。
でも・・
「僕は・・」




でも




「エディスだよ」



苦しくて 悲しくて 寂しかった


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あきゅろす。
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