[携帯モード] [URL送信]

碧螺春の宴
黄金の公爵と清らかな約束を
  僕と兄さんが出会ったのは2年前。
僕が何も知らなかった時代。
「初めまして、エドワード君。エディスと言います」
全く、知らない。エディス大佐。
その頃の兄さんは知らない人で、とても死んでいた。
「エドちゃん、これが今日からお前のお兄ちゃんだよー」
汚らしい男が笑う。
でっぷりと太った体は脂ぎっていて、そう・・ガマガエルによく似ている顔をしていた。
「嬉しいだろ〜エドちゃん」
この体に刃を突き刺したら何が零れてくれるだろう。
キラキラする金貨かな? 宝石かな?
「はい、お父様」
皮膚の上を彷徨っている手も、何もかも。
汚らわしくて、大嫌い。
「愛してるよ、エドちゃん」
でも。
「はい、お父様。エドワードも愛しています」
エドワードは、僕は、愛していないと許されない。
お父様だけが僕を愛してくれているのだから。
だから、僕もお父様だけを愛さなくちゃ、いけないんだ。
「エディス大佐。私がいない間エドちゃんを宜しくねえ〜」
にやにやと意地汚い笑み。この人もこの男に触られ、汚れていくのかな?
「ええ。私のような者でよければ」
綺麗過ぎる、整った笑顔。作り物の人形の、微笑み。
「エドちゃん、エディスお兄ちゃんに御挨拶、しなさい」
「はい、お父様。・・エディスさん・・いえ、エディスお兄様っ、宜しくお願いしますね」
にっこりと最後まで言った後、とびっきりの笑顔を見せてあげる。
汚らしい男は満足そうに厭らしい笑顔を見せるが、エディスさんは表情を崩さない。
「とても・・いい息子さんですね」
と、その綺麗な声が言った時に思った。
ああ・・この人は、汚れない人だと。
そして
この人は寂しい人だ、とも―・・


[*前へ]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!