木柵鉄観音の宴
8
「よっしゃ倒した! さあエディス、これで邪魔者もいなくなったし俺と一緒に帰ってもらうぞ!」
にやりと笑うシルク。
そのシルクの後頭部をぶん殴り倒したのは、
「駄目ですよ。この方にはまだすべき事があるのですから」
にこりと手刀を構え微笑むのは勿論シトラス。
「さ、うるさいのが起きないうちに傷を見せてください」
床に座ったエディスの前に座ったシトラスはまず足を手に取った。
「ああもう・・貫通しちゃってるじゃないですか・・。もっと自分を大切にしてくださいよ」
しかしそれもシトラスが二節程歌うと治った。勿論、赤くなってしまった頬もだ。
「いつも悪いな、シトラス」
「そう思うなら早く目的を達成してください。それに僕も僕で旅を楽しんでますから。さ、早く」
「ああ」
ギールにちらりと目を向けるとシトラスは口パクで『この人すぐに無茶するので見ててくださいね』と言った。
「オッケ」
それにぐっと親指を立てて答えた。
「エディスさぁん・・!」
「え? ああ・・アリエッサ」
振り返るとふわっと腕の中に入ってきた。
「どうした?」
柔らかめに笑うとアリエッサも笑った。
「あのっ、ありがとうございました!」
「どういたしまして」
そのまま抱きしめてやるとアリエッサは完全ヤられた顔。隣のギールが哀れすぎて泣けてくる。
「あの、私・・!」
「ん?」
「私、頑張って皆とこの国を良くしていきます!」
返事の代わりにくしゃりと頭を撫でてやる。・・これ以上悩殺する必要ないだろうに・・。
「もし、もし・・この国がエディスさんから見てもいい国になったとしたら、いえします! いつか・・もう一度来てくれますか?」
「ああ。必ず来る」
にっと大好きな美少年らしくない笑顔。
最後に見れて、良かった・・。
私は、恋をしました。貴方に。
幸せです。貴方を好きになれて!
「よーし、じゃ行こうぜ。・・・な、なぁっ、ギール!」
「・・・・・・ああ!」
にっと笑い付いていく。
「今度は何処に行くんだ?」
「決まってね――――! まずは情報収集だなあこりゃあ」
それはそれは蜜の味のする物語
一人の国と国とを旅する少年の物語
その少年の名は―
【END】
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