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木柵鉄観音の宴

  人は歌を歌う
人は詩を歌う
人は恋を歌う
人は涙を歌う
人は笑を歌う

人は―誰しも歌う

「んあーああぁっ!」
ぐーっと伸びをすると体がボキボキと悲鳴を上げる。
「お。兄さん起きたか?」
「おう。今起きた!」
「ははっ! そりゃ丁度いい。そろそろ着くぜー!」
がははと豪快に笑いかけてくれる。
うーん、ひげ面のオヤジだからぴったり!
いかにもで似合っていて、男! という雰囲気でちょっと渋くて格好いい。
「そっか。アリガト」
「しっかしまー‥兄ちゃんも何でこんな国に? 数日前にガキが大将のレジスタンスなんぞに城を占領されたとこだぜ?」
話しながらも馬車はどんどん先に進んでいく。
崩れた国の元へ。


それはそれは とても蜜の味のする物語でした
国と国とを旅する少年がいました
少し青みがかった輝く銀の髪と最高級のダイヤモンドを表す蒼氷色の瞳の美貌
その美しさのあまり大抵の人は彼の事を神や妖精と同じように忘れ去ってしまうのです

それは 再生を始める物語
闇の中に放り込まれた一筋の光
舞台は変えられ この崩れた国から始まる

「ほれ、着いたよ。兄さん」
「おう! ありがとよ!」
にっと少年は笑った。
「あ。こっちの人は放っておいていいのか? 連れじゃねえのか?」
「や、ソイツ放っといていいよ。ただのストーカーだからさ。あ、俺の代金もソイツに払ってもらって! じゃ、世話になった!」
「おう! って兄さんまだ動いてるよ!」
ぶらりと手を振って、怪我もなしに動く馬車から飛び降り、少年は歩いていった。
「はー・・・えれー綺麗な子だったなあー」
ぼーっとオヤジが言うとごそりと荷台の一部が動いた。
先ほどまで少年がいた方と逆の位置だ。
「うあー、よく寝たっ!」
のっそりと出て来たのは妙に背がでかい青年。
「あれ? おじさん、アイツはー?」
「え? さっき降りてアッチのほうに歩いてったぞ? なんだ、やっぱり連れだったのか」
「うっそ! うわ、ありがとー!」
「兄ちゃん代金二人分!」
あわてて降りようとした青年を引きとめ、金をせびる。うーん‥流石だ。
「ふ・・っ?! って、うわ――――!」
むなしく、人が落ちる音を聞いて親父は額を押さえた。

さあ、物語を一部だけ話そう
崩国の姫と秘密の少年の話を…


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あきゅろす。
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