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木柵鉄観音の宴

  「きゃ!!」
倭姫はしりもちをついた。
「ご、ごめんなさい。」
人とぶつかってしまったのだ。
「こちらこそ、ごめんなさい。」
すっと手が差し出された。
すべすべとした真珠のような手だ。
「有り難う。」
「いいえ・・・。」
ぶつかってしまったのはゴシック調の服、ゴシックロリータ・略してゴスロリの(しつこい)服装をした可憐な少女だった。
「貴方、旅行者?」
「ええ。そんなかんじ・・・かな。」
「ふうん。そう。何処に行くの?」
「あ、あのね・・・。」
「ううん。分かったわ。」
女の子は手をビシッと前に突き出した。
「いざ行かん 金の王国 炎が 消えるときまで♪」
少女が声に出したのは倭楼国の南で回れ右をしてじーーーーーっと見ると霧のない日以外は見える国・蓮華国れんかこくの狂播きょうばんというものだ。
「金の王国・・・そうよ、私そこに行くの。どうして分かったの?」
「妾、占い師だから♪」
「そうなの。」
「いいえ、うそよ。」
「・・・・・。」
「あ、妾もう行かなきゃ。バイバイ、倭姫」
ワヒメ
バイバイ、倭姫
そう言うと少女はやたらヒールの高い靴をコツコツと鳴らしながら歩き去っていった。
「どうして・・・?」
「どうしてあの子・・・私の名前を知っているの・・・?」
倭姫は呆然として言った。

「とにかく、進まなければ・・・。」
すると背後からドオンという爆発音が聞こえた。
人間だったものが空からボタボタと落ちてきた。
こんな時も、空は夜で、赤い星屑がひしめき合っていた。
「え・・・?」
一瞬、倭姫は何が起こったのかわからなかった。
しかし頭の中に浮かんだ答えは残酷なもの。
魔物が人を殺しているのだ。
きっと、大量に。
「なんて事を・・・。」
倭姫はそうつぶやいた後目を閉じ、両手を上に上げた。
「天に住まうわれらが神・シン様 今この私に清めの力を使うことをお許しください。」

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