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菊花の宴
葬送行進曲・孤独の森・後
「お兄ちゃん・・っ!」
再び瞳に光を取り戻したシンディアの前に薄い金色の光を持つ少女が飛び出した。
「アイシェリア!」
抱きつこうとしたシンディア。
しかしその体はアイシェリアの前ではじき返された。
「え・・・?」
驚きに目を見張るシンディアに向ってアイシェリアは微笑んだ。
「やっぱり・・そうだったんだね。」
あまりにも哀しげな微笑を浮かべるアイシェリア。
その瞳はシンディアの首に向けられていた。
「・・・どういう事・・だ?」
すっと自分の首・・さきほどあの少女の気を受け、傷ついた場所を触る。
「・・・・・青・・・・・・?」
普通赤まである血が青色、それも微かに光を放っている。
「な・・っ、何だよこれぇ・・!」
シンディアはその血を見て驚いた。
今までどんなに血が出てもこんな色じゃなかったからだ。
「・・・・青・・。」
「え?」
しかし悲鳴に近いあの少女の声でふっと我に返らされた。
「青の光・・・・・・っ! 何でお前が・・・!?」
少女はぼとりと手から魔凛の頭を離した。
「青の光・・・・・?」
何だよそれ、と呟きながらシンディアはその場に立ち上がった。
「アンタ・・なんか知ってんのか? コレの事・・・。」
すっとシンディアが自分の首元を指しながら言うと少女はビクッと体を震わせた。
「し・・知らない! 俺は何も知らない! 俺は何も知らないんだ!!」
また少女の叫び声と共に気が発せられた。
「っ!」
シンディアがそれから逃げようとする前にアイシェリアが前に向きかえった。
「お兄ちゃん、逃げて。」
ポソリとそう呟くとアイシェリアは真正面から少女に向き合った。
「バカっ!! お前をおいて逃げれるかよっ!」
一緒に逃げるぞっ! とアイシェリアの腕を掴もうとした手は拒まれた。
「ダメ、逃げて。逃げて・・生きて! お兄ちゃんは生きなきゃいけないのっ!!」
叫びながらもどんどん迫り来る気の塊を避け続けるアイシェリア。
「お願いっ! 私なら大丈夫だから!! ・・大丈夫だから・・逃げて?」
そう囁くように言った瞬間アイシェリアは倒れた。
あの少女が立ち止まったアイシェリアの足に向けて気の塊をぶつけてきたのだ。
「アイシェリア・・・ッ!!!」
名を叫んで近づこうとするシンディアをアイシェリアを許さなかった。
「大丈夫・・っ!」
ぐっと力をいれて立ち上がるアイシェリアの右足からだらだらと血が出、下の草を赤く染めていく。
まるで自分が怪我をしたかのように痛そうな顔をするシンディアに向ってアイシェリアは術を放った。
「ぐあ・・・っ!」
いきなりで不意をつかれたシンディアはあっさりとアイシェリアの封印術を真正面から受けた。
「アイシェリア・・・ッ、何を・・・!」
馬鹿な事はやめろ!と叫ぶシンディアにアイシェリアは微笑を向けた。
「ごめんね。」
「え・・・・・っ!?」
「ごめんね、お兄ちゃん。お父さんの事・・私の事怖かったでしょ? でも・・もう大丈夫。その分・・今、返すから・・。」
そして少女と共に燃えさかる炎・・森の奥へと進んで行ってしまうアイシェリア。
「・・・・・・・・・・ッ、嫌だ・・! 嫌だ・・嫌だアイシェリアァァァァァ!!!!!!」
俺は・・その背中を見つめるしか・・出来なかったんだ・・。


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