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いつみくんの災難 3
「…」

まさか、自分が
まさか、仲間が

乗客になるとは、誰もが思いもよらなかったことである。一同がしばし沈黙していると、コツコツと靴音が響き、隣の車両から人影が近づいてくる。

「おや?お客様のご乗車ですか。ようこそ、ミラクルトレインへ」

頃合いを見計らったかのように現れたのは、車掌であった。

「ようこそ、じゃねえっつうの!旦那なら何か知ってるんだろ!?」
「どうされました、お客様?」
「おい…ふざけてんのか…!!」
「おっと!冗談が過ぎましたか!失礼しました、両国さん」

仮面のせいで表情がわからないため、車掌の言っていることが本気なのか冗談なのか、見た目だけでは区別できない。いまいち信用に乏しいのだが、何かを知っているとすれば、その人しかいない。

「で?あんたなら、もちろん原因も知ってるんだろう?旦那?」
「ええ、…両国さんの件ですね」
「頼むからさっさと元に戻してやってくれ。見苦しい…」
「ひどっ!都庁さん、それひどっ!」
「そうだぜ、リーダー。レディにそんなこと言うもんじゃないね」
「ええ、女性には、優しく接すべきかと」
「そ、そうか…すまなかったな、両国…」
「つーか!そういう扱いいらねえから!で!?これの原因は?元に戻る方法は!!?」

進まない話をぶったぎり、両国は車掌に食いつくように聞いた。

「ええと、そうですね…今回の両国さんの件、早い話が、エラーです」
「え、えらー?」
「そう、エラーです。実は、ミラクルトレインの運行状況や乗車予定は、日付変更とともに調整されることがあるのです。そして、今回、昨日から今日に日付が変わったときにその調整がかかっています」
「で?」
「時間的に考えると、調整がかかったとき、ミラクルトレインは両国駅近辺を走行中でした。まあ、理屈までは定かでありませんが、その調整の影響が、具現化した両国さんに現れているのではないかと考えられます」
「なんで運行状況の調整で俺が女になるんだよ!?」
「ですから、エラーだと申し上げたでしょう。その証拠に、今回の調整はうまくいかなかったのです。お客様の乗車予定も一件ずつずれています。ですが、車両は正常に運行している…」
「???」
「…調整の不具合が、両国駅の近くで起きた。そして、ミラクルトレインに起きるべき影響が両国に…ということか」

早くも車掌の話においてけぼり気味の両国に変わり、都庁が間に入った。

「おそらく。なぜ女になったのか?ということについては…なんとも。もしかしたら子供になっていたかもしれないし、もっと年を取った姿かもしれないので、これはたまたまだと思います。そもそも、元が駅ですから…年代よりも性別のほうが影響を受けやすいのかもしれませんね。本来、駅に性別はないですから」
「なるほどな…で、元に戻るには、どうすれば?」


20091217




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