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それは想定外 5

「おや、お掃除中でしたか、相変わらず熱心ですねえ」
「まあ、そんなところだ…」
「ところで、両国さんを見ませんでしたか?」
「両国?」

唐突にその名を言われ、都庁はどきりとした。

「両国が、どうかしたのか?」
「ええ、私が帰ってきたらちょっと約束をしていたので…どちらにいらっしゃるかご存知ではないですか」
「いや…その、知らん」
「…そう、ですか。では、探してみますね。ありがとうございます」

何かを知っているふうな、隠しているふうな都庁の態度にいささかの違和感を感じたが、月島はそれもさほど気には留めず、行ってしまった。

運よく、タッチの差で都庁と両国、そして月島の3人がはち合わせることはなかった。
いろいろと、気まずい。
両国の言葉が耳から離れない。
月島には気持ちがあって、都庁にはそれがないという。

あいつ、月島の気持ちは酌めるのに、私のそれには気づかないのか…ということは…

常々、あの二人の不適切な行動を忌々しく思っていた。その理由が、単にマナー違反だから、ということ以外にもあったと、今さら都庁は気がついてしまった。

「ふふ…まいったな」

窓ガラスに映る自分の姿につぶやき、都庁は小さく嘲笑をこぼした。





20100413


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あきゅろす。
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