それは想定外 2
都庁は握っていた雑巾を床へ投げ置き、隣で掃除に励む両国の後ろへ回ると、左手首を掴む。
「ん?どうし…」
その手を無理やり背中側にひねり上げると、必然的に両国の身体は前屈みになる。
「ちょ!リーダー!!?」
雑巾を持つ右手は網棚から降ろすことが出来ず、そこにつかまったままになり、両国は身動きが取れない。
「いて…いてぇって!左手!外せ!」
「例えば…」
「あぁ!?」
「お前の言う、いざというとき、とは、例えばこういうことかと思ってな」
声色一つ変えず、都庁は淡々とことを進め始める。
両手が不自由になっている両国の身体へ手を滑らせ、都庁は制服のボタンを一つずつ外していく。
「り、リーダー!冗談はやめろって!」
「…」
「っ、は…」
耳たぶに吐息を浴びせられ、両国の全身にぞくりと鳥肌が立つ。背中から都庁が覆いかぶさっているこの態勢は、自力ではもう振りほどけない。
「離せっ…リーダーっ!」
都庁は無言のまま、今度は耳たぶを甘噛みする。
「あ…んっ」
「そんな声を出して…まったく」
「…!ふ、不可抗力だろっ!」
「まあいい。で?いざというときに力で何とかするんじゃないのか?」
都庁が冗談でこういうことをするような性格でないことは、誰の目にも明らかである。それだけに、今のこの都庁の行動が、両国には信じられないでいた。
「そういえば、月島も」
「月島?」
「あの華奢な身体でもお前を組み敷いているんだろう?」
「な…に」
「だったら、私にもできるかと思ったんだが、予想外に簡単だったな」
どうして今、月島の名前が出てくるのか。両国には都庁の行動の真意がさっぱり読めない。
けれど、耳元で甘く響く低音には、静かな情欲の色が潜んでいた。
ボタンを外し、シャツの下へ滑り込んできた指先は、胸の突起に触れる。その指先の冷たさに、両国の身体はびくりと跳ねた。
20100413
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