いつみくんの災難 1
定期運行を続けるミラクルトレインでは、車掌から一同へ、本日のお客様乗車予定を告げられた。
「よーし!今日もお悩み解決がんばるぞ!ね、六本木さん!」
「そうだね」
「お前たち、お客様をお迎えする準備はできているか?」
「ああ…って、両国は?」
周りを見渡した新宿は、一人足りないことに気付く。
「おや、いませんねえ?」
「まったく、何やってんだあいつは」
「そういえば、朝からいなかったよね、両国さん」
「もうじきお客様がいらっしゃるというのに、どこへ行ったんだ、両国は」
「探してきましょう」
「頼む…月島」
「行ってきます」
眉間に手を当てて首を振る都庁に、月島が応じた。
ぱたぱたと小走りに車内を見渡して歩いたが、両国の姿はどこにも無い。
「困りましたねえ…」
―
一方の両国は、ひとり途方に暮れていた。
こんなんじゃあ、人前になんか出られやしねえ…
「両国さーん?どちらです?」
うわ!月島!やべえ…ど、どうする…
両国はとっさに座席の陰にしゃがんでみたが、まるで無意味である。探しに来た月島に、すぐに見つかってしまった。
「両国さん!こちらでしたか。もうじきお客様がいらっしゃいますから…って、何してるんですか?」
「…」
うずくまったまま返事をしない両国を不思議にも思ったが、とりあえず連れて行くことが先だと、月島は腕を伸ばした。
「さあ、みなさんがお待ちですよ!急ぎましょう!」
「うわっ!!」
ぐいと引いた両国の腕は予想外に抵抗がなく、月島は勢いで後ろによろけた。
「!?」
両国がそんなに軽いはずも非力なはずもないのに…ふと、月島は自分が掴んでいる腕にも違和感を覚えた。
「両国さん…?」
掴む腕の先には、うなだれた両国がいるのだが…明らかに何かが違う。
「月島ぁ…」
「両国さん…これは…いったい?」
20091216
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