おさんぽはどちらまで 2
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「さて、どうしたもんかねえ」
特にあてがあるでもなく、降り立ったのは新宿駅。ホームに出ると、新宿はとくがわを地面に下ろした。新宿の腕から離れたとくがわは、大きく伸びをすると頭をぶんぶんと振り、目をぱちぱちと瞬かせた。
「で?何がしたいんだ?」
「何がしたいって?」
新宿の問いに返事をしたのは、本来なら答えられるはずのない、とくがわ。
「こんなことまでして、俺に何の用だって聞いてんだ」
「お前に質問する権利はねえ」
「そりゃ申し訳なかったですねえ、とくがわさま」
そこにいるのは、愛らしい豆柴ではなく、見目麗しい青年。だが、その見た目にそぐわない、ぶっきらぼうな話し方をする。
「汐留の声はうるせーんだよ。あー、耳がいてえ」
青年はけだるそうに、首を左右に傾けてぽきぽきと鳴らす。
「なんでその格好になる必要があるんだ?お前」
「この俺をお前呼ばわりとは、ずいぶんと出世したもんだな、新宿」
「おっと…これはこれは、恐れ多くも御前でしたか」
わざとらしく口元を覆う仕草をする新宿をじろりと睨みつけ、とくがわは偉そうに言葉を続ける。
「ったく…どいつもこいつも、口のきき方ってもんを知らねえから困る」
「そりゃそうだろ。ただの犬だと思ってんだからな」
「ふん」
いつにもましてピリピリしたその様子に、さすがの新宿もとくがわの異変に気がついた。
「ずいぶんとご機嫌がお悪いご様子で」
「ああ、おかげさまでな…そうだな…ちょうどいい、お前に付き合ってもらうか」
「?」
20100302
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