ウワサの真相 7
「で?その必要は?」
「…は?」
両国が手練手管というやつ、それをご教授してもらったというのは理解できたが、それをする理由がわからない。
「どうしてそんなことをする必要が?」
「…はぁ!?」
月島のいたって真剣な態度に、両国には驚きといらだちの混じった感情が湧いてきた。
「そんなもの、一体どこで披露されるつもりですか?」
「どこでって…どこでって!決まってんじゃねえか!!」
どうにも察しの悪い月島に、両国はついつい声を荒げてしまう。こういうときだけ、どうしてこうも鈍感なのかと、呆れてすらくる。
「え…まさか…」
「お?」
「まさか、他に好きな方でも…」
「…」
「そうなんですか!?そんなっ!!!」
自分の言わんとすることがやっとわかったかと思いきや、月島の想像は両国の意図とはまったく別次元へと旅立った。
「…気分悪くなってきたから、帰るわ」
「だ、大丈夫ですかっ!?」
「大丈夫なわけねえだろ!誰のために…誰のせいでこんなことしたと思ってんだよ!?」
「誰って………」
目の前にいる物腰のやわらかい男。見た目には随分とそっち方面にこなれていそうなくせに、その印象とは程遠い、呆れるほどの鈍さに、両国は自分が情けなくすら覚えていた。
「両国さん…」
「あのよお…ホントにわかんねえの?」
「…え?え??」
「もーーーいい!てめーなんかのために身を粉にした自分が情けねえわ」
「てめえ?…私?…?」
両国の発言にますます狼狽する月島。目の前でそんな月島の姿を見ていた両国は、いよいよもって自分が情けなくなった。
「はぁ…なんてこった」
「…すみません、でした」
「てめーがそんなんだから!そんなんだから…」
ぶつぶつと文句を言いながら、両国は月島を恨めしそうに見つめる。
どうして、こんな男のことを気に病んでしまったのか。どうして、こんな男がいいと思ったのか…。
「てめーが何もしてこねえから、こっちからしてやってんだよ。いいかげん気づけ、バカ」
「…」
「…なんだ?その顔!ははっ!」
目を丸くしてキョトンとする月島の顔を見るなり、両国は笑いだした。
「し、失礼ですよっ!両国さん!」
月島は突然罵倒された上に笑われたことを憤慨するも、両国は笑い声を上げる一方だ。
「だって…んなバカ面して…アハハ!!!」
ケタケタと笑う両国を見ているうちに、つられて月島も笑った。
「お前が笑うなよ!」
「ふふ…だって…私、バカですね」
「おうよ。バカなうえに、鈍すぎ」
両国に鈍いと言われるのは心外なところもあったが、今の月島は反論する気にもならない。
「両国さんの気持ち、よくわかりましたよ。嬉しいです」
「そうかい。わかればいいんだ、わかれば」
うんうんとうなづきながら、両国は満足そうにしている。
「じゃ、これで問題は解決だろ?話は終わりだな」
20100201
←text
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!