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ウワサの真相 6



最後尾の車両に着くと、月島の足がピタッと止まった。

「わっ!」

月島にぶつかりそうになるところを寸前でこらえ、両国も足を止めた。

「あっぶね…いきなり止まんなよ!で?どうしたってんだよ?」
「両国さん…教えてください」
「何を?」

しらばっくれているのか気が付いていないのか、両国はとぼけた返事をする。

「新宿さんが言ってました。あなたに聞けと」
「え…新宿さん…まじ…?」

新宿の名前を出され、両国は気まずそうに月島から視線を逸らした。

「私に内緒で、何をしていたんです?」
「何って、別に…」
「責めているわけじゃないんです。ただ、知りたいんです。話してもらえませんか…?」

話すか否かを迷うように視線が泳いだあと、意を決したのか、両国はぼそぼそと言葉を発した。

「新宿さんに、頼んでたんだ」
「どんなことを?」
「練習相手」
「何の?」
「何、って…その…」

いつもの両国らしからぬ歯切れの悪い言葉とともに、そこで両国は黙ってしまった。

「両国さん?」

月島が不安そうに両国の顔を覗き込んだ、そのとき。
不意に、月島の頬から耳にかけて、両国の手のひらが触れた。そして、その手が月島の後頭部にかかると、くい、と頭が前に引かれた。

「!」

まさか。

「…え?」

まさかとは思ったが、両国から、してきたのだ。

「こういうこと、だよ」
「キス…の、練習?」
「ち、ちがう!」

こういうことの練習だと言われれば、誰しもそう思うはずだが、両国はそこをめいっぱい否定した。

「違うんですか…?」
「その、なあ、なんつんだ?こう、その…あー!もう!言わせんな!!」
「…っ、ふふ…」

自分でも何を言いたいのかがまとまらず混乱している両国を見て、月島は思わず笑った。

「わ、笑ってんじゃねえ!」
「ごめんなさい…だって…ふふ…」

立ち話もなんだからと、月島はシートに座ることを提案した。誰もいない車内なのに、なぜか狭苦しい優先席に二人で座り、両国の様子が落ち着いたのを見計らうと、月島は話を再開した。

「それで…こういうことを練習していた、というわけではないと?」
「ちがう!接吻じゃねえ!」
「せ、せっぷん…そうですか。では、何を?」
「手練手管をな!」
 
自信満々に何かと思えば、また突飛なことを両国は言い出した。

「あの人くらいしかいねえじゃねえか、こう、手練手管に長けてそうな人っつったら」
「そうですね」
「だから!ご指導ご鞭撻いただいてたってわけよ」

ふふん、と鼻を鳴らして両国は得意げに言う。新宿と何をしていたのかはわかった。しかし、それで月島がやすやすと納得できるわけはない。


20100124


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