ウワサの真相 5
「あの…気づいてたんですか」
「気づいてたっつーか、ばればれっつーか…、両国は気づいてないだろうけどな。で、月島。お前、俺に話があんだろ?」
「ええ、そうです」
「だろうな…でも!残念ながら、俺から言うことは何もないぜ」
「ふふ…何をおっしゃる…ないはずはないでしょう?私が知らないとでも…」
全く悪びれる様子のない新宿に、月島は怒りをこらえ半笑いで答える。
「言っておくが、俺は感謝こそすれ、恨まれる筋合いはないってことだ。変な噂を聞きつけたんだろうけどな、そりゃとんだ誤解だ」
「誤解?」
「俺は両国から相談を受けてただけ」
「相談?どうして新宿さんが?」
「は?…ひょっとしなくても、バカだな?お前」
「ば、バカとは失礼な!」
話が全く理解できていない月島に、新宿はこれ以上付き合い切れないといわんばかりの視線を送る。
「な、何です…その顔」
「月島、お前さあ…お前らってさ、何なの?」
「お前ら?私と両国さん、ですか?」
「ほんっと、お前らって二人揃ってバカだな。真相が知りたいんだろ?なら両国に聞け。めんどくせーけど、お前には黙ってろって言われてるからな!」
ひょいと立ちあがると、新宿は階段をすとすとと足早に降りていった。
「え!?し、新宿さん!まだお話が!」
「俺さー、あいつらに呼び出しされてんのー!今から行ってくるから!じゃな!」
「あ…行ってらっしゃい…」
新宿は追いかければ間に合う距離にいたが、それを追おうとはせず、月島はだんだんと遠くなる新宿の後姿を眺めていた。
「両国さん…」
不意にその名前を呼んだことではっと我に返ると、月島は境内をばたばたと走りぬけた。
両国に。両国に会って真偽を確かめたい、というよりも、ただ、両国の顔を見たいと思った。
―
「戻りました」
「おかえりなさい」
「ああ…ん?お前一人か?」
ミラクルトレインに戻ると、相変わらず都庁と六本木は二人でレポートやらなにやらをいじくっていた。汐留ととくがわはすやすやと寝息を立てて熟睡中であった。
「両国さんは?」
「まだだが」
と、都庁が答えたとほとんど同時に、隣の車両のドアが開き、両国が現れた。
「よっ!帰ったぜい皆の衆!っと、あー、疲れた…」
「お前も戻っていたのか」
「おう!今しがた!」
「両国さん!」
「お?なんでい?つきし…おわっ!」
両国の顔を見るやいなや、月島は両国の腕をつかみ、すたすたと車両を移動していく。
「どうしたってんだよ!?」
「両国さん、ちょっとお話が。都庁さん!最後尾の車両、お借りします!」
「あ、ああ…」
月島にいきなり腕を引かれ、転びそうになりながら両国は後をつけていく。月島にしては珍しく勢いづいた行動を、都庁と六本木は呆然と眺めていた。
「これから何が…始まると思う?」
「修羅場か、あるいは、お花畑…」
「どっちもうっとおしいな…」
「うん…」
20100124
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