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ウワサの真相 3



当事者に確かめるのがいちばんだと思った月島は、新宿に話をしようと思った。

「新宿さんはいらっしゃいますか?」
「え、新宿さん?」

今日はお客様の乗車予定がないため、終日自由行動となっている。車内には、とくがわと戯れる汐留、レポート作成をしている六本木、そして、出来上がったレポートに目を通している都庁がいた。見る限りこの三人しかいないので、ひとまず月島は新宿の居所を尋ねた。

「新宿さんなら、いないよ」
「今朝は顔を見たが、すぐに出かけていったぞ」
「どうしたの?なんか用事?」
「え、ええ、まあ…」

と、そこで月島は気がついた。両国の姿もないことに。

「ところで、両国さんはどちらに?」
「りょ、両国さん?」

月島の質問に、それまで平穏だった車内の空気が、いっぺんにヒヤリとした。

「さ、さあ…み、見てないなー、僕は…」
「私も…だ…」
「僕も…」

ギクシャクとした皆の返答。彼らは絶対に状況を分かっていると踏んだ月島は、満面の笑みで都庁に迫った。

「教えていただけませんか?」
「し、知らないっ!」
「…ご存知ですよね?」

笑顔の奥で何を考えているのか分からない月島。特に、こういうときに笑っているのは本当にヤバいと皆もわかっている。笑顔の重圧に耐えきれず、都庁は口を開いた。

「両国は…出かけている」
「どちらへ?」
「行き先は知らない」
「どなたと?」
「…」
「どなたとですか?」
「新宿と…だ」
「そうですか。ありがとうございます」

丁重に礼を言うと、月島は踵を返して隣の車両へ去って行った。それを呆然と見送る三人。

「すまん…」
「気にしないで、都庁さん…あれは不可抗力だよ…」
「…そう思う」

黙秘できなかったことを詫びる都庁に、汐留と六本木は同情の言葉をかけた。

「今、新宿さんと月島さんを会わせたらやばくない?」
「…相当」
「しかし我々になすすべなど、ないだろう」
「そりゃそうだけど」
「なるようになる…きっと」
「そう…だな…」

今後の展開が想像できたが、あえてそれ以上は考えないよう三人は努めた。しかし、月島の去った後も車内はヒヤリとした空気のままだった。


20100122


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