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ウワサの真相 1
知らないほうが幸せだという人のところに限って、噂はやってくるものである。駅たちが噂話などするかは定かではないが、近頃、大江戸線の駅たちの間でにわかに囁かれる話があった。



今日は、ブラザーズが新宿に会いにミラクルトレインへやってきた。

「凛ちゃんいないんだって」
「だから!ちゃんと連絡してからくればよかったんだって!」
「凛ちゃんのことだから、ここでぐうたらしてると思ったんだけどな」

あてが外れたブラザーズは、新宿を探しに外へ行くことにしたらしい。そのときに彼らが話していたことが、そばで読書をしていた月島の耳になんとなく入ってきた。

「凛ちゃんにあのこと聞きたかったのに」
「あのことって、もしかして、あの話?」
「お前も聞いた?」
「うん。で、ほんとなの?」
「さあ?どうなんだろ…両国さん?」
「信じられねーよな、あの凛ちゃんが」
「女の子しか興味ないって思ってたのに」
「もし本当だとしたら、どうするよ?」
「あのー…みなさん…」

『両国』という名が出てきたことが気になり、月島は彼らの話に口をはさんだ。

「あ、月島さん。すみません、うるさかったですか?」
「いいえ、おかまいなく。それより、今のお話は?」
「月島さんはなんか聞いてないですか?凛ちゃんと両国さんが…」
「両国さんと、新宿さん?」
「っと…!」

言いかけて、はっとしたように口を塞ぐ一の様子に、月島は妙なものを感じえずにはいられなかった。

「ばかっ!一!」

一の言葉をを大慌てで叱咤する吹の様子に、月島はますます疑念を抱く。

「お二人が、どうかしたんですか?」
「あ…いえ、なんでもないっす!」
「そうそう!何でもないんです!な!零二」
「何でもないですよ!な!よ、よし、もう行こ、吹!一!」

三人は何かを必死に包み隠そうとしている。

「えっ…みなさん、待って!お話を…!」
「失礼しますっ!」

月島の呼びとめを振りきり、話を揉み消すように三人はばたばたと車両を移動してしまった。

(新宿さんの話…両国さんが関わっている?)

あの様子といい、穏やかな話ではなさそうだと確信した月島は、三人の後を追った。


20100122


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あきゅろす。
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