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12月14日 1
いつもどおり、乗客のいない車内は、静かに時間が流れていた。

「静かだな」
「だねえ」
「それもこれまでです」

都庁と汐留の会話を、月島が否定する。

「どういうこと?」
「今日は何日ですか?」
「12月14日…ああ」
「え?なんかあったっけ?」
「ふふ…」
「あ、ボクわかっちゃった」
「…私もだ」
「でしょう?」

含み笑いをする月島の顔に、汐留、つづいて都庁もピンと来たようだ。
外出している新宿と六本木、所在不明な車掌、とくがわを散歩に連れ出しているあかり、それ以外に、ここにいない人物がひとり。

「大石殿オオおおおお!!!!」

どこからともなく、大声が聞こえる。

「ね?」
「うわぁ」
「やかましいな」

どたばたと車内を駆ける足音がだんだんと近づいてくると、声の主は3人の前に姿を現した。

「両国さん、うるさい」
「車内では静かにする、最低限のマナーだぞ、両国」
「静かになどしていられようか!?貴殿ら、そんなことでよいのか!!!?」
「付き合ってらんないよお、両国さーん」
「なんだと!汐留殿!?この日にじっとしてろと申すのか!!!!?」
「まあまあ、両国さん、ちょっと落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか!!!討ち入り!討ち入りでござる!!!」
「両国さん、ここでは皆さんのご迷惑になりますから、あちらで」
「月島殿っ!!!体裁を気にしている場合ではないぞ!!!」
「やかましくてかなわん。頼んだぞ、月島」
「ええ、都庁さん」
「都庁殿っ!!!!そのような気概で!…」
「わかりましたよ、私がお付き合いしますから、ね?」

じたばたと暴れる両国を引きずるように、月島は離れた車両へと連れて行った。




「どうして皆の衆は忠臣蔵の素晴らしさがわからねえんだ?」
「そういうことじゃないですよ。討ち入りごっこは皆さんも付き合ってくれるじゃないですか」
「ごっこ!ごっこたぁ、聞き捨てならねえな!月島っ」
「おっと…」

思わず本音をこぼしてしまった月島は、大げさに口を覆う仕草をする。

「なんで今日に限って全員そろってねえんだよ、あいつら」
「討ち入りならやたでしょう?ちゃんと日付が変わったときに」
「ばっか!あれは予行だっての!本番は今日の夜中からなんだって!」
「それは困りましたねえ…新宿さんと六本木さん、今晩は遅いと伺っていますし」
「かーーーっ!あてにならねえやつらだな!!!」

頭をかきむしって怒る両国を見るに見かねた月島は、なだめるための提案をした。

「そうですねえ、でしたら、今日は私が、両国さんに付き合いましょうか」
「?」
「忠臣蔵にゆかりのある場所巡りなどは、いかがですか?」
「おっ!いいねえ!!」
「決まりですね」
「よっし!そうと決まれば、善は急げだ!行くぞ月島っ!」
「はいはい」

嬉々とする両国に、月島は微笑み返した。




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