[携帯モード] [URL送信]
さきちゃんととくがわ 3

「しかも、さきと一緒とはねえ」
「うるせーなあ。そんなん俺のせいじゃねえし。つうか新宿、お前もなあ…もうちょっとうまいことやれよな」
「はは、いきなりだな」
「いいか?お前がちゃらんぽらんなせいで、聞きたくもねー話に俺様が付き合わされるはめになるんだよ」
「はあ」
「おめーらののろけ話なんか、どこの犬も食わねえっての!おい、都庁!お前も!うじうじ男の腐ったのみてーなこと言ってんじゃねえ」
「あ…ああ…」
「あー、もう!お前らのせいで疲れた!寝る!」
「はいはい、おやすみ」
「…ああ、新宿…ちょっと耳貸せ」
「なんだよ」

都庁の怪訝な顔をよそに、とくがわは新宿にぼそぼそと耳打ちをした。

「…それはそれは。ご忠告、痛み入ります、とくがわさま」
「おぼ…て、おけ…よ、し…ん…」

言葉尻もおぼつかず、とくがわはそのままぱたりとシートに倒れ込んだ。そして、シートの上で寝息を立てているのは、青年ではなく、すでに犬の姿に戻ったとくがわだった。

「ね…寝たのか?」
「ああ。こいつ、元がこの大きさだろ?人型でいるにはだいぶエネルギーを消費するらしいぜ。寝て体力回復ってことらしい」

さっきまでとはうって変わって、すうすうとかわいらしい寝姿を見せるとくがわ。それを横目にしながら、新宿はくすくすと笑っている。

「そうなのか…しかし、知らなかったな。とくがわにこんな力があるとは」
「一応、秘密ってことになってるからな。知ってるやつのほうが少ないと思うぜ。立場上、俺と大門は知ってるけど」
「そうだったのか…しかし、なぜ?」
「ん?ああ、こいつが人の姿になる理由か?そこまでは俺たちも知らないね。まあ、何かしら理由があるんだろうが、そんなの知ったこっちゃないさ」
「ふむ…なるほどな。それにしても、とくがわが人語を理解できるということは…こいつの前では迂闊にものを言えんな」
「へえ?何を言って聞かせてたって?俺にも聞かせてほしいな、さきちゃん」
「べ、別に!おまえに聞かせるようなことではないッ!」
「あ、そう。ま、いいけどね」
「それより、さっき、何を言われたんだ?」
「耳打ちのこと?あー、あれね…さきにわざわざ聞かせるようなことじゃないから。とくがわと俺のナイショ話」
「…そ、そうか」
「そうそう!知らないほうがいいこともあるんだって」

含み笑いをする新宿に、都庁はそれ以上突っ込んで聞くことはしなかった。

「そうだ、さき。一つ言っておくけど」
「なんだ?」
「俺以外の前で、自分の弱みを見せるようなこと、しないでよ?俺、妬いちゃうから」
「はあ!?お前の前でだって、誰がするか!」
「はいはい、悪かったって」

顔を真っ赤にして怒鳴りながら、都庁は隣の車両へとどすどす足音をたてて去っていった。その後姿を見送ると、新宿は眠りこけるとくがわの隣に腰を下ろした。

「やれやれ。思わぬところにライバルがいたもんだな…ふふ…」

とくがわの頭をぽんぽんとなでると、静かに立ち上がり、新宿もその車両を後にした。


ミラクルトレインは、まだまだ謎だらけです。


20100117
←text



[*前へ][次へ#]

3/4ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!