甘い、あまい 1
「またそんなにかけるんですか?」
「いいじゃねえか、好きなんだから」
腹が減っては戦が出来ぬと、両国はひとりおやつタイムをしている。
「そんなに辛いものばかり食べていては、舌がバカになりますよ」
「こうしたほうがうまいんだって!食ってみるか?」
「いいえ…遠慮しておきます」
パッケージには「うすしお」と書いているのに、両国が食べているそれはなぜか真っ赤。
両国は大好きな七味唐辛子をどばどばと振りかけて、真っ赤になったうすしおポテチをおいしそうに食べていた。
「かーっ!うめえ!七味を考えたやつはほんと天才だな!」
どう見ても辛いだけ、というより、辛いを通り越して痛いとすら思えるであろう、真っ赤なポテチ。よくそんなものが食えたものだという顔で月島は眺めていた。
「ん?あれ??もうなくなったか?」
袋を覗き、空っぽになったことを確かめると、両国は口の上に袋を逆さまにして、細かいかすと七味の粉をぱらぱらと口に入れた。
「なんか物足りねえなあ」
「七味もおいしいですけど、これもおいしいですよ」
そう言って月島が差し出したのは、白地にいちご柄の包みにくるまった粒。
「いちごミルク味なんですよ、これ。がりがりかじって食べるのが好きなんです。おひとついかがです?」
「アメか?アメはあんまりなあ…」
包みを一瞥するも、特に興味を示すこともなく、両国は七味の付いた指を舐めていた。
「甘いものはお嫌いですか?」
「んー、嫌いっつーか、そんなに好きでもねえけど…」
「そうですか…好き嫌いはいけませんねえ」
月島は何かを思いついたように、にこっとすると、両国を手招きして近くに呼んだ。
「なんでい?」
「甘いものが好きになるおまじないをかけてあげますよ」
そう言うと、月島は包みをほどき、ピンク色の粒を口に放り込んだ。
20100101
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