まとめてニャンニャン 約束はいらない 3 「元親殿…」 「ん?」 沈黙を遮って政宗が元親を呼ぶ。 「このようなことを申すのは、どうかと思うのですが…」 「?」 「あの…」 なんだか言いづらそうにもじもじする政宗もかわいらしい、と元親は思った。 「いいぜ、言ってみな」 「…政宗と元親殿は…恋仲だったのですか?」 「なんだよ、いきなり」 「いえ…もし、もしそうだったら…いえ、思っただけ、だけ…です」 だんだんと語尾か小さくなる。顔を真っ赤にする政宗の顔を見ていると、言葉より先に身体が動いた。 「元親殿…?」 元親は政宗の引き寄せた。何も覚えていなくとも、目の前にいるのは政宗だ。まぎれもなく、己が惚れている相手なのだ。 元親は政宗の顔をじいっと見る。 「元親殿?何か……っん!!」 政宗の言葉を遮るように、元親は唇を重ねた。固く閉じる政宗の唇に、無理矢理舌をねじこみ、拒む政宗を蹂躙していく。 「う、ん…いやっ!」 やっとの思いで政宗は元親を突き飛ばした。元親の口元に血が滲む。かまれた舌先がビリビリする。 「ああ、おんなじだ、あの時と」 「あの時…?」 「前にもこうやって無理やりしたら、舌かまれた。さすがは政宗だな……た〜、しっかし、いってえ」 「…」 ぺろっと舌を出し、痛みに悶える元親を横目に、突然の行動と発言が飲み込めない政宗は顔を真っ赤にしている。 「何も覚えてないと思って、からかっているのですか?」 「事実を述べたまでよ」 「うそ!!」 元親の態度に、政宗はどうしようもない感情が込み上げ、それは怒りとなって現れた。 「そうやって!何も覚えてないのを面白がってるだけでしょう!?」 「なんだよ?」 「わたしはっ!わたしは…元親殿のことが……どうして…わたしは真剣なのに…!!」 「お、おい」 見ると、政宗は怒りながら、泣いていた。 「元親殿にとっては、わたしなんかただの邪魔もので…」 「なんでそうなるんだよ」 「記憶が戻れば、それでいいんでしょう!?何も覚えていないわたしのことはどうだって…!!」 政宗は元親にむかって腕を振り上げる。元親は暴れだした政宗を押さえるため、とっさに懐に抱きこんだ。 「やだ、離して!!」 「…離すかよ」 「元親殿には関係ないことでしょう!」 「どうでもよくない」 「なんで…っ!?」 「あんたが政宗だから」 政宗ははっとしたように元親の顔を見る。 「気を悪くさせたのは、すまねえ。でも、言ったろ?今。あんたは政宗だ、だから…」 そう言うと少し身体を離し、元親は政宗の目元に溜まる涙を指ですくう。その指を払うように政宗は顔をそむけた。 「…もっかいしても、いいか?」 なんと言えばよいのか。そんなことを聞かれても、困る。 「いやなら、しねえから」 政宗は少しの間をおいて、うつむいたままこくりとわずかにうなずいた。元親の指があごに触れると、促されるように顔を上げた。 「次は、ちゃんとな」 もう一度、二人はくちづけした。 強引なことは何一つしない。ひたすら、優しく触れてくる。ふと、政宗は既視感を覚えた。 「元親殿」 「ん?」 「もっと…あの…」 「いいのか?」 元親の目の色が変わったのに気付き、政宗は必死で弁解する。 「ち、違います!!変な意味ではなくて、今、何か思い出せそうだったの、で…」 「ホントか!?」 「…はい」 また唇を重ねる。 政宗が少し開くと、元親の舌が入ってきた。政宗の舌を見つけると、執拗に絡めてくる。熱っぽくて息苦しくて、でも。 「どうだ?」 感覚は身体が覚えていた。けれど… 「ごめんなさい。今の…感覚はなんとなく覚えがあったのですが…他は、何も」 「謝ることじゃねえよ。焦っても仕方ねえ。それより…」 「それより?」 「いや、なんでもねえ。悪かったな」 ―続 20081026 ←*next→# [戻る] |