まとめてニャンニャン 新年事始 1 「政宗様っ!何を考えているのです!?」 「いいじゃねえか!仕事なら、年頭の挨拶もちゃんとしたぜ。他も済ましてある!」 「そういうことを言っているのではありませんっ!!」 新年早々、居城には小十郎の怒鳴り声が響き渡っていた。怒号を聞きつけた成実が顔を出すと、ちょうど政宗の姿が見えたので大声で呼びかけた。 「おう、梵!どうしたんだ?また小十郎怒らして」 「あ?オレは怒らすようなこた言ってねえ。あいつが勝手に騒いでんだよ」 廊下を足早に進みながら、政宗はすれ違う成実と言葉を交わす。 「成実!オレの留守は頼んだぜ」 「留守って…どっか行くのかあ?」 「西だ、西!!」 すたすたと通り過ぎていく政宗の後姿を眺めながら、成実は小十郎の怒鳴り声に納得した。 「長曾我部、か…どおりで」 ― 政宗は小十郎の必死の制止をぶっちぎり、西へ来た。 いつも突然政宗のところにやってくるくせに、この鬼は逆のことには慣れないらしく、たいそう驚いていた。 「あんた、ほんとにいいのか?こんなとこいて…」 「長居はしねえさ。新年の挨拶は殿様の大事な役目だろ。アンタんとこにもそのために来たんだぜ。それともなにかい?お邪魔だったか?」 言葉に嘘はないようで、その証拠にいつもの装束や着流しではなく、政宗は正装で参上している。 「邪魔なんてこたあねえが…おまえ、そういうのできるんだな…」 「は?」 元親の発言に首をかしげる。 「たまにだと見違えるな」 「ああ、こう見えても育ちがいいんでね」 「そりゃそうだ」 ははっ、と軽い笑い声をあげたがと思うと、いきなり大きく溜め息をついた。 「忙しいやつだな」 「…」 「なんだよ…」 なんとも反応の悪い元親に、徐々にいらだってきた。吸っていたキセルを火箱に打ち付けると、カン!と乾いた高音が響く。その音に元親もはっと我にかえる。 「さっきから様子がおかしいぜ。心ここにあらずみてえな目して。なんかおかしい…」 「見とれてたんだよ」 「……は?」 元親が真顔で当たり前のように放った言葉に、政宗は自分の耳を疑った。 「だから、見とれてんの、おまえに」 「はあ…」 言い方は悪いが、今日の政宗にいつものがさつな態度がいっさいない。目の前にいる政宗はいつもとはまるで別人のようなのだ。 いつもとは違う意味で、隙のない、指先まで神経を張り詰めさせたその所作。その一挙動に、元親は目を奪われずにはいられなかった。 「何言ってんだか…」 「けっこう本気なんだけど」 座ったままにじり寄ってくる元親を、政宗はじっと見つめる。眉ひとつ動かさず。 「政宗」 「どうした?」 「わかってるだろ?」 「何が?」 会話ともならない言葉の交わし合いが続く。 「相変わらず盛ってんなあ、アンタ」 「おまえだってそのつもりだろ」 政宗は片方の口角を上げてニヤリとする。 火花を散らしそうな視線がぶつかったら最後、奪い合うように互いの唇を貪る。 「ん、う…む」 相変わらずの息苦しさと熱っぽさを感じながらも、元親の感触に政宗は気を許してしまう。 しばらくすると、絡まる舌がゆっくりとほどける。 「ひめはじめ…」 ぷは、と口を離すと、元親がつぶやいた。 「姫はてめーだろ」 「どっちでもいいよ」 元親は上半身をゆっくりとくずすと、政宗を抱き抱えながら横になった。 「まだ日が高いぜ」 「んなこと気にするタマかよ。それとも、竜宮の乙姫様は明るいところは恥ずかしいってか?」 挑発的な表情も言葉も、嫌いじゃない。 「ご冗談を、鬼姫様」 「ふん」 ニヤニヤとふざけながら、元親が自分の上に覆いかぶさる政宗の顔を引き寄せると、政宗も自ら顔を近づけ、再び唇を重ねる。 −続 20090104 next→# [戻る] |