まとめてニャンニャン 約束はいらない 6 ― 「ん、あっ、ぁあっ」 「こら、あんま締めんなって、出ちまうだろ」 政宗を上に跨がせたまま繋がる。 ぎこちなく動く政宗をよそに、じゃれるように元親はあちこちをまさぐる。乳首を下で転がすと、政宗の身体はきゅんきゅんと刺激され、元親を締め付けてしまう。 「だって…あ、ん…そんな、の…ずるいっ…」 「わざと」 政宗の弱いところを的確に攻めてくる。知らなければ出来ないことだ。 「…わたしのこと、知ってる?」 「そりゃあ、おまえのことなら…ん、ほら」 政宗の腰を掴むと、いささか強引に突き上げる。 「ひ、あ!!ん、ぁっ!」 「ここだよなあ」 「だめぇ、だめ、だめだめ!!」 びくん 身体が大きく揺れて、それっきり。政宗は元親の胸にもたれ、肩で息をする。 「よかった?」 「は、っ、ふあ…」 元親の首に腕をまわし、快感に耐える政宗を見ていると、男の性が働く。 「もっと見せてみろ」 「え、あ…!?」 向い合っている政宗の膝の下に腕を入れ、政宗を自分にしがみつかせる。そのままゆっくり政宗を寝かせると、今度は元親が上になる。 「おまえ、こっちのが好きだもんなぁ」 「覚えてない…」 「思い出させてやろうか」 政宗は元親の肩に腕をかけ、足を絡めてしがみつく。 「焦らさないで」 「おっ…やる気だな」 そうして、政宗と元親はひたすら行為に没頭した。欠けている何かを補うかのように、ただひたすら。 「足、開け」 「あ!っあ、あっ、ぃあ、ああっ」 政宗の足首を持ち上げ、さらに奥深くまで腰を打ち付ける。 「あ…も、出そ…」 「ちかぁ…っあん、あっ!!ひあああ…っ」 お互いにもう限界だ。 「中…いい?」 「ゃっ…!だめ、だめ、…ぁあっ…ああ、っ!!!」 政宗は悲鳴をあげながらもがくが、腰を掴まれて抵抗のしようも逃れようもない。 「っ…わり…無理……ぅあ、っ、ぁ、出る…」 快感に抗うことが出来ないまま、痙攣する蜜壺へ、どくどくと元親の情欲が何度も注がれる。 「あ!はあ…ぁっ、あん…」 政宗の中は元親を締め付け、最後の一滴まで搾り取りそうなほどに離さない。 「ふ、あ…あ!っ…!」 ぞくぞくと快感が背中を走る。長い射精感ののち、元親のモノがずるりと引き抜かれた。それと同時に、蜜壺からは白濁する欲情がこぼれる。 「中、だめだって…」 「……悪かった。おまえが良くて、我慢できなかった」 「本当?」 「おう。おまえは?よくなかったか?」 政宗は首を振って元親の言葉を否定する。 「そっか。したら身体の相性、ぴったりなんだな」 事後に口説くのは元親のお決まり。 「何人に言った?それ」 「さー…今の以外は覚えてねえかな」 「ふふ…」 元親の腕に身体を預け、政宗ぼんやりと虚空を見つめていた。 「それ言うの、これで、最後にしろよ……」 「……?」 うつろな瞳でつぶやく政宗の言葉に、元親は違和感を覚える。 「力…はいんねえ……」 「おい、今、なんて」 糸が切れたように、政宗はそのまま眠ってしまった。 「おい!起きろっ!まさむね!!」 元親がいくら呼んでも、ゆすっても、政宗は目を覚まさなかった。 ― 翌朝、元親は早くから出立の支度をしていた。港には乗ってきた船が停まり、皆の乗船を待っていた。 「おめえら!支度は出来たか?」 「いつでも出られますぜ、アニキ!」 各所とも準備は整った。 船は帆を掲げ、徐々に陸を離れていく。 これでしばらく、ここともお別れってか… 元親に心残りがないわけではない。だがそれは、次に来るときまでここに置いておこうと思った。 「もとちかーっ」 ついに幻聴が聞こえるようになったか。たいしたことねえな、オレも。 「もとちかぁーーっ!!」 いや、違う。 確かに聞こえる。 「船、戻せ!!」 指示を出すと、元親は甲板から身を乗り出す。すると、ものすごい勢いで港に入ってくる馬が見えた。 「まさむね?」 間違いない。 「もとちかっ!!てめえ!何のつもりだこれはぁっ!!」 朝の海に大声が響く。 政宗は馬から降りて元親のもとに走る。ばしゃんと波音をたてて、元親は船から飛び降りた。 政宗のそばに駆け寄ってみると、政宗は寝巻姿のまま。裾ははねかえる潮でびしょびしょ。 「なんつー格好だよ…」 あられもない姿の政宗に、とりあえず上着を肩からかける。 「てめえがいきなりいなくなるからだろ!!それより、これ!!」 政宗は元親が残していった書き置きを突き付ける。 「ああ…気にすんな…」 ぶすくれる政宗の頬に手を伸ばす。 「わかるか?」 「何が」 つんけんした政宗の態度が懐かしくすら思えた。 「もう、大丈夫だな」 「……元親?」 「よかった」 元親は安堵の表情を浮かべると、船の方へときびすを返した。 「もう行くのか?」 政宗の質問に、元親は何も言わない。 「おいっ!もっとなんか言うことあるんじゃねえのか!?元親!」 元親の足がぴたりと止まる。ばしゃばしゃ音を立てて政宗が走り寄った。 「元親」 すぐそばで呼ぶと、肩越しにゆっくりこちらを振り向く。 「まさむね…」 その顔に、声に、ぎょっとした。 どうしてこいつはこんなにすぐ泣き出すんだ。 「小十郎から聞いた。おれ、記憶なかったんだってな。大変だったろ?心配かけて悪かったな。もう、大丈夫だから、だからさ…泣くなよ。かっこわりぃ…んだよ」 「まさむね…っ」 元親は身体をむけると、政宗を抱き締めた。 「アンタが元に戻してくれたんだろ?」 「そう…なるのか。つうか、なんで来たんだよおまえ」 「は…はあ?」 唐突にぶっきらぼうなことを言われ、政宗はムッとした。がすぐにそれは撤回された。 「顔見たら、離れたくなくなるじゃねえか。もうなあ…持って帰りてえ…」 「Ha!そりゃ無理だろ。それに、てめーはどうせまた来るだろ」 「いつかなんて、約束できねえけど」 「そりゃいつもだけどな」 たわいもないことを話せる。それがこんなに幸せなことだったのか。元親はゆっくり深呼吸すると、政宗から身体を離した。 「そろそろ時間だ。じゃなあな、政宗」 「待って」 政宗は元親の首に手を添え、つまさきだちで元親の口許を狙う。 「ん…」 「アンタが寂しくないように」 「おう。じゃあな」 「気をつけて」 ― 政宗は、ずいぶん遠くなった船を港から見ていた。 「今さら、何言ってんだかなあ」 ふふ、とほくそ笑みながら、元親の書き置きを眺める。そしてびりびりと破ると、空に向けてまいた。 「いらねえよ…オレも」 そう、約束なんかいらない。 ―終― 20081124 ←* [戻る] |