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チカダテで5のお題
眼帯
いつものように、元親は政宗を求めていた。
膝の上に乗り、こちらに背中を向け、肩を震わせながら吐息混じりの声を漏らす政宗。
そういえば、お互いにいつも外すことはなかったから、不思議にも思わなかったけれど。
そこに何がある?ふと、衝動に駆られた元親は、つい、と右目に手を伸ばす。政宗の気付くのが少し遅れた。

「っ!!やめろ…、離せっ!!!」

とっさに押さえたが、眼帯は元親に奪われてしまった。

「っ!テメェ…!!返せ!!!」

右目を押さえた政宗が怒鳴りつけてくる。眼帯を取り返そうとしがみつかれた、ものすごい形相。

「暴れんなよ、な?」
「…何のつもりだ」

必死先ほどまでの甘い声とはほど遠い、とても、低い声。どこか怯えているようにも思えた。

「見てぇ」
「っ…」
「見てぇんだ。だめか?」
「っ…なんで…」

政宗は狼狽している。よほどのことがあるのだろうか。
おとなしくなるまで様子を見ていたが、どうにも落ち着かない。ならば、と元親は自分の左目の眼帯に手をかけた。

「あ……、…」
「これ、オレの秘密な」

不躾かも知れないと思いながらも、政宗は思わず見入ってしまった。

元親の左目。
赤い瞳。
血の色を宿す瞳。

「色が」
「ん…生まれつきでな。鬼の目なーんて言われたこともあったか。まぁオレはどうでもいいんだけど、やっぱり気味悪がるやつもいてな、昔っから人前では出すなって言われてから、な。まあ実際、光に弱いっつのもあンだけど」

政宗は瞳を凝視したまま、動かない。

「はっは、そんなに珍しいかい。あんまり見てると、鬼に食われっぜ?」

政宗は首を左右に振った。

「…きれいだな、赤くて、きれいだ」
「そうか」

政宗の視線が下を向き、右目を押さえていた手を取り、前髪をかき上げる。

「いいのか?」
「見たいんだろ!?いいぜ…オレのは、アンタのみてえにきれいじゃねえが」

髪をかき上げたそこには、傷痕があった。
瞳と一緒に、心をえぐった傷痕。愛されなかった証、死ぬほど嫌いな傷痕。本当に忌々しい。元親はこんなものを見てどうしようというのか。ひたすらの劣等感のかたまり。この右目も、自分も。

「ガキんときに熱出して眼ン玉が飛び出て…それを抉ったあとだ…これで満足だろ」

かき上げた髪を下ろそうとしたとき、手が止められた。元親は傷痕を慈しむようにくちづけ、舌でゆっくりとなぞる。触れられたところが熱を持つ。

「おい、くすぐってぇよ」

悟られないように、わざと邪険にあしらう。

「ん…」

ちゅ、と音をたてて、名残惜しそうに唇が離れる。その音、仕草に、政宗は思わず耳まで赤くなる。うつむいたまま、つぶやいた。

「…っ、気持ちわりいだろ、こんなん」

元親は何も言わない。何も言わずに、優しく触れてくる。愛撫を続けると、政宗はふたたび吐息を漏らしだす。

「っ…、もとちか…なんか、言えよ」
「すこし、黙ってろ」

傷痕から離れた唇が、今度は政宗の唇をふさぐ。

「ん、んっ、ふ」
「ここも、この傷も、…全部、オレに、くれよ…」
「もとちか…っ」



「…なぁ、その右目、他のやつに見せんなよ」
「?」
「その、あれだ、右目は…」
「what…?なんだ?そ…」
「いいから!他のやつの前で眼帯取んなよ!?おれのもんなんだからな!わかったか!?」

妙に強い語気に押され、わけもわからずうなずく政宗。
そうだ。こんなもの、やすやすと人前にさらしてはならない。政宗の傷痕、整った顔に刻まれた醜い傷跡、そのアンバランスさがおそろしく官能的なのだ。まったく、無自覚とは怖いものである。
政宗は元親の赤い瞳をじっと見つめている。

「じゃあ、かわりにアンタのこの左目、オレにくれよ。今からオレのもんにする。だからほかのやつには見せんなよ。それであいこだ」
「…いいぜ」

本当に、かわいいことを言う。

瞳どころか…心ごととっくにアンタのもんだろう…これだから…

秘密は眼帯のなかにしまっておくとするか。
元親は人知れず心に思った。



−終−
20080818

※眼帯じゃなくて目の話になってますな!
お付き合いありがとうございます!
かげつ




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