なかよしこよし
●darling、近づいて、服従(チカダテ)
「どこだかわかるか?」
「えー…わかんねえ…なあ」
天も地も定かでないような足取り。一人では歩くどころか立てもしないほどの酩酊状態で、政宗は元親の問い掛けに返事した。
ここは四国。
京都にいた政宗はついでだからと元親のもとを訪ねていた。
調子にのって飲み過ぎたらしく、それでなくてもアルコール度数の高い酒はあっという間に政宗の意識を呑み込んでしまった。
「部屋まで行くぞ」
「うん…」
うなだれたまま元親の言葉に返事をする。
「歩けるか?」
「らいじょぶぅ」
どう見ても無理だと思ったが、本人がそう言うので立たせてみるが、力が入りそうなない。
「んあ?」
ふわんと政宗の身体が中に浮く。見かねた元親が抱き上げて連れて行こうとしたのだ。
「おら、行くぞ」
「どこ連れれいくつもりら?」
「だから、部屋だって」
「あー!やらひいことする気なんらお、このすけべ」
「酔っ払い相手にするかっつの」
軽く受け流してはみたものの、本音をいえばそういうつもりがないことはなかった。がしかし、記憶がないであろう状態の相手に手を出すというのは気が引けるものである。
そんなことを考えながら、くだをまく政宗を連れて部屋の前についたとき、気付いた。
「あっれぇ?おれの部屋っじゃねえよぉ」
元親は無意識のうちに、政宗の泊まる客間ではなくて、自室に足を向けていたらしい。
「え…?あれ?なんで?」
「ほおら、なー、やっぱりやーらしーことしよおとしたんらあー」
キャッキャとはしゃぐ政宗を尻目に、この酔っ払いをとりあえず自室に寝かすことにした。
「ちっと横んなってろ」
「ぁい」
「ちょっと待ってな」
布団に政宗を降ろすと、元親は足早に部屋を出て行こうとする。と、ぴんと着物の裾が張る感覚がした。振り返ると、こちらを睨むようにしながら政宗が裾をつかんでいた。
「どこいくんら?」
「水とか持ってこようと思って」
「いらね」
気を利かせたつもりがつっけんどんに断られたが酔っ払いだから仕方ない。
「他には?なんかほしいものあるか?」
「…もとちか」
思わぬところで己の名前を呼ばれ、元親は動きをとめた。
すこしの沈黙のあと、政宗が口を開く。
「おぉい、聞いてんのかー?聞こえてんのかー?」
ケラケラ笑う政宗を眺めながら、元親は苦い顔をする。踵を返すと、元親は政宗の枕元に膝をついた。
「冗談に聞こえねえんだけど」
「あ?」
政宗はおもむろに起き上がり、元親に顔を近付ける。そして耳元でささやく。
「本気にしてもいいんだぜぇ?」
その言葉にはっとして顔を離すと、政宗は元親と目を合わせてニヤリとする。酒のせいか、すこし潤んだ瞳から目が離せない。
「本気にするぞ…」
元親は政宗を押し倒し、耳、首筋、唇と舌を這わせる。触れるとますます欲しくなるのがわかる。
「満足させろよ…」
政宗の一言に、理性などは吹き飛ばされた。
してやられた、と思う。
動き出した衝動は止められない。
衝動に巻き込まれた理性の端っこで、元親はぼんやりと考えた。
いつだって、政宗には逆らえないものなのだが、それも無意識のうちにそうさせられているかのよう。
まるで服従。そして、自らそれを望んでいるのかもしれない。
これはこれで、しあわせだったり、するんだよな…快楽の果てに地獄があったとしても、な。
―終
20090222
※たまにはエチなし。いや、書いてないだけで、してはいるんです。筆頭の酔っ払いしゃべりする中井ボイスが聞きたいです←キイテナイ
※090302加筆修正
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