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なかよしこよし
●Can I love you?(小←政♀)
政宗はまったくもって虫の居所が悪い。

もう付き合い切れねえ!!

そう言い放ち、居城を訪れている客人たちをほっぽり、自室に籠ってしまった。


つい先刻のこと―


「政宗殿っ!」
「政宗ぇっ!」

盛大に襖を開ける音や廊下を渡る異様な足音、さらにはなにか言い争うような声…

「騒々しいな…なんなんだよアンタら、人ン家で」
「おお!政宗殿!ちょうどよいところに!」
「政宗、ちょっと付き合え」
「はぁ?」

真田幸村と長曾我部元親、暑苦しいのが二人も押しかけて来たか…

どうせ大した用でもないだろうと思いながら、客間に通した。

「で?本日は何用でおいでに?」

イヤミっぽくわざと丁寧な言い回しをする。

「今日訪ねたのは他でもねえ。お前の考えを聞きに来た」
「俺の…考え?」

はて。
全く思い当たることがない。

「単刀直入に申し上げる。政宗殿は、某の子を産んでくださいますな!?」
「いや、オレの子に決まってんだろ?な!」

…は???

「元親殿は黙ってくだされ!某は政宗殿に伺っておる」
「オレも政宗に聞いてんだよ」
「ちょ…おい」
「元親殿が某と同時に質問しては、ほら、政宗殿が困っておられるではないか」
「てめえがいるから答えづらいだけなんだよ」
「何をっ!」

こいつら…何を言い出すのかと思えば…

「政宗、この暑苦しいのがおかしいこと言ってるだけだ」
「某がおかしいだと!?元親殿よりはマトモであろう!」
「るせぇんだよ!なあ政宗、はっきりさせてくれや。オレたちが騒いでも埒が明かねえから、政宗に答え聞きにきたんだ」

政宗の混乱に輪をかけるように、二人は同時に言い放った。

「某の子を産んでくだされ!」
「オレの子を産め!」





なんなんだあれは!恋仲でもない女に唐突にそんなことを言いに来る…向こうは知らないが、少なくともこちらは恋仲のつもりはない。付き合いきれない。不躾にもほどがある。
政宗はバカな客二人をぶん殴り、そのまま放ってきたのだ。

「政宗様」

部屋に入って少しすると、襖の向こうから、声がかけられた。落ち着いた声。

「客人らには、今日のところはお引き取りいただきました」
「そうか…」

つい、と襖を開けると、小十郎がひざまずいていた。その姿を見るやいなや、政宗はぺたんと腰を落として小十郎に抱きついた。

「どうかなされましたか?」
「別に…」

小十郎は分かっているはずだが、あえて聞いてくる。その言葉はもどかしいが、低く響く声が心地よい。
うなだれながら自分にしがみつく政宗を支え起こすと、小十郎はひざまずいた姿勢から正座した。もそもそとその上にまたがると、政宗は小十郎にしがみついた。

「なあ…俺って、なんなんだ?」
「と、申しますと?」
「俺は、子を産むために生きてるのか?アイツらにとって、俺はなんなんだ…」
「…」
「俺には選択肢がねえのか?…女だからか?」

悔しいのか悲しいのかよく分からないが、涙が出そうになる。

「政宗様」

甘えてくる政宗の頭を小十郎がなでてやると、政宗はその肩にぽふ、と頭を落としながらつぶやいた。

「好いたやつの子を産むのは…叶わねえのかな」

少しの間をおいて、小十郎が口を開いた。

「政宗様は当主であられますゆえ、自分本位の身勝手は許されませぬ」

そんなことは言われるまでもない。が、言葉にされると、やはり重い。

「わかってる」
「そうですな。ですが…政宗様とてひとりの姫君でございます。好いたお方のそばにいたいと願うことも、不思議ではありますまい」

思いも寄らぬ言葉に、がばっと勢いよく顔を上げ、小十郎の顔をまじまじと眺めた。

「小十郎…」
「ん?小十郎の顔に何かついておりますか?」

政宗の驚きを尻目に、小十郎は穏やかに微笑む。

「誰ぞ、好いた方でもいらっしゃるのですかな」

胸を射抜くような言葉にどきっとした。
何も言わないけど、きっと、きっと小十郎は気付いている。

「そんなもん、ねえよ」
「そうですか」

いないのだ。
ただ一人以外は…

考えにふけるあまり、無意識のうちに小十郎に顔をすりつけていた。
昔から変わらない政宗の仕草を見ていると、小十郎もついつい甘やかしてしまいたくなる。

「しかし、いくつになってもこのように甘えられていては、小十郎のほうが心配で政宗様をどこにもお出しできません」
「…え」

そう言うと不意に迫って来る小十郎に、思わずギュッと目をつぶる。

ちゅ

唇が額に触れた。
子供をあやすように。

「政宗様はもう少し大人になるまで、この小十郎をお側に置いてくださいませ」

そう言うと、小十郎は政宗と身体を離し、ゆっくりと立ち上がらせた。

「甘える時間はお終いですぞ。ほら、しゃきっとしなされ!」

名残惜しそうに自分を見る政宗をぴしゃりと諌める。
「小十郎…」

言いたいことは、うまく言葉にならなかった。
そのかわりに、こう言った。

「俺は、お前の居るところにいる。だから、お前は俺のそばにいろ。一生離れることは許さない」
「御意にございます、政宗様」

そう、これでいい。






見返りは何もいりません。
ただ、あなたを愛していてもいいですか。

それ以上は何も願いません。
ただ、そばにいるだけでいいのです。

これ以上は何も望みません。
だからそれだけ、許してください。




−終−
20080913


※まさむねちゃんの脆いところが書きたかったかな。小政もやっぱいいよなあ。うまく書けなかったが。
最後のヲトメティックポエムが小十郎だったりするとかしないとか(突飛だよな)
お付き合いありがとうございます!
かげつ


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