[携帯モード] [URL送信]

なかよしこよし
●ダーリンは心配性(チカダテ♀)
目の前ででかい図体がこっちを睨んでる。
すごい顔、まさに鬼の形相ってやつだ。
自分だからかろうじて耐えられるが、その辺の女子供なら一目散に逃げ出すだろう。

「てめえ、いったいどういう了見だ」
「ah?了見も何もねぇだろ」

やつの怒りの発端はこっちにあるといえばあるが…
どうやら、俺が幸村に会いにいっていたことがすこぶる気に入らないらしい。

「やましいことがねぇなら、何しに行ったかぐらい言えるだろ!」
「なんだそりゃ」
「それとも?オレに言えねえことでもあんのか?えぇ!?」

元親は本気のようだ。ぶち切れられたらやっかいである。

「言えねえのかよ!政宗っ…!!」
「わぁったって。言うよ、言えばいいんだろ」

今にも飛び掛かってきそうな勢い。さすがにやばそうだと思い、しぶしぶ口を割ることにした。

「この前は…なんでも珍しい甘味が手に入った、とかで?食わせたいから来いって、幸村の伝言持って、忍が来たんだよ」
「…で?」
「まあ、すぐに戻るつもりで出向いてやったわけだ。珍しい甘味とやらを初めて食ったんだか、そいつがうまくてよ。アンタにも食わせてやりたかったぜ」
「話をそらすな」

ばれたか…ちっ
内心舌打ちをしながら、話を続けた。

「んー、ホントはそれで帰るつもりだったんだけど、よ…酒とか振る舞われてよ、せっかくの気遣いを無下にするわけにもいかねえだろ?だから飲んでたわけだ」
「…」
「したら…」
「したら?」

じわじわと核心に迫るような誘導めいた口調。

「あの、せ、迫られた、つーか」
「迫らせた…のか?」
「最後まではしてねえからな!!!」
「ふーん。で?どこまで、させたって?」

墓穴!まずった。

「く、口だけだ!それ以上も…言われたけど、接吻であきらめさせたぜ」

「せっぷんだぁ?」

怒りをこらえた低い声に思わず身がすくみ、うつむいてしまった。が、過ぎたことだと開き直り、そのまま続ける。

「まあ減るもんじゃねえし、そんくらいで済んだんだからいいだろ……!?」

そろりと視線を上げ、元親の顔を見て、ギョッとした。

今にも怒りが爆発しそうだったのに、目の前のでかい図体は…でかい図体のくせして、ぽろぽろと涙を流して泣いていた。

「おい、泣くなよ…」

予想外の展開にこっちがびびる。

「なん…っ!な…でっ!…と…うも…がり…っ!!」

嗚咽まじりの言葉はうまく聞き取れない。

「な…なんだって?」
「…オレと、オレとっ、いう、ものが、ありながら…っなんで」
「はぁ?」

コイツ、何言ってんだ…

さすがの俺も唖然とした。

「おまえはっ、隙が多過ぎるっ…そんなの、だめだっ!それは!!」

泣きじゃくるでかい図体に困惑しながらも、なだめるように言葉を返す。

「悪かった、そうだな、アンタがいるのにな、悪かった。もうしねえよ」
「ホントか?もうしないか?ぜったいか?」
「ああ、絶対だ」

眼帯が涙でびしょびしょになってしまっている。外してやろうと頭に回した手に、元親の手が伸びてきた。

「まさむね…」
「これ、びしょびしょじゃねぇか。外すだけだ」
「…おう」

自ら眼帯を外した元親の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。大の男が、でかい図体が、人目も憚らず泣くなんて、かっこわるい。

「ずいぶん男前だなあ」
「うっせぇ…」

ぐずぐずといつまでも泣き止まない元親。懐から手ぬぐいを取り、顔をふいてやる。

「ほら、動くなって…」
「いいニオイ…」

やっと涙がおさまってきた。すんすんと鼻を鳴らしてにおいをかいでいる元親の仕草はまるで子供みたいだ。

「政宗」
「なんだ?」
「だっこ」

かっこわるいのに輪をかけて、子供のようなもの言いをする。

「はぁ?んなもん、しねえよ」
「ちがう。オレが政宗をだっこすんだよ」

正面からぎゅっと抱きついてきた。

「甘えるなよ」
「甘えさせろよ」

寂しさゆえに離れない、そんなふうに見える元親の仕草。くっついたまま、いっこうに離れるそぶりもないその様子に、さすがに諦めた。
やっとおさまってきた涙と鼻水を拭きながら、独り言のように問いかけた。

「そんなに俺に惚れてるのか?」
「知らなかったのかよ?」

知らないわけがない。
試すなんて、そんな面倒なことをしなくとも、わかりきっている。

「まさか。俺はアンタのもん、だろ?」
「…うん」

元親が俺をどう思ってるかなんて、はたからすれば火を見るより明らか、だと思うが、本人に自覚がないとはおそろしい話だ。
それにしても、でかい図体でかんしゃくなんか起こしてもかわいくないってことを気が付いてほしい。
まあ…かんしゃくはやっかいだが、たまには嫉妬されるのも、悪くねぇな…。

ぎゅーっと身体をくっつけたまま離れようとしないことも、今日は許してやるよ。




−終
20080910


※女々しい元親さんが書きたかったのです。つか、女体化が全く生きてない!
お付き合いありがとうございます!
かげつ


←[*][#] →

3/20ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!