なかよしこよし
同棲じゃなくて、共同生活 3 現代パラレル♀
―
家について、それなりに夕食を取ることにした。が、おれはもうそんな気分じゃなかったから、昨晩の残りのカレーでカレーうどんをこさえて元親に食わせた。
ついさっきあんだけ甘いものを食らったのに、まだ食えるのか。
「だってよぉ、甘いものとメシは別腹だぜ」
まあいい。食いたいなら食わせてやるのはこちらの務めだ。好きなだけ食ってくれ。
おれは、さっさと風呂に入り、床に入った。
しかしながら、疲れているはずなのに、なんとなく寝付けないでいた。
冗談じゃねえ。エンゲル係数が高すぎやしねえかあいつ。給料ほとんど食いもんじゃねーかありゃ。
つか、今日の飯代、全部こっち持ちかよ!会社の義務とはいえ、あんなのの面倒見なきゃなんねーってどういうことだよ…あーーーーー…でも、うまそうに食ってたな…
たわいもないことを考えているうちに、うとうとと睡魔が襲ってきた。身体を横向きにしてふとんにくるまる。
やっと寝られそうだ。そう思ったとき。
がらっ
部屋の引き戸が開き、のしのしと足音が近づいてくる。
「ん…?」
どさっ
「!!!」
足音の主は、突然目の前に現れた。いきなりのことに声も出ず、おれは硬直してしまった。
元親はおれのベッドに倒れこみ、そのまま眠ってしまった。
うそだろ…?
こいつ、寝ぼけて部屋間違えたんだ…ええ、ええええええ…!!!
うわ、顔がっ、顔がっ…近え…
…あ、わ、うわっ、寝返り、打つな、やめろ、ばか…ばか……!!!
―
翌朝、いちばん最初に見たのは、真っ蒼な顔をした元親だった。目が覚めたらおれの部屋にいたのにさぞかし驚いたんだろう。
寝返りを打った元親は、抱き枕のようにおれの頭を抱えて自分の胸に引きつけてきた。おれは、とてもじゃないが自分の部屋では寝ることができず、元親が起きないようにそっと腕を抜けて、予備のふとんを出してリビングで寝ていた。正直、男と床を一緒になんて、したことがない。あるとしても、ガキのころの添い寝くらいなもんだ。
おれがよく寝ていたところをたたき起し、昨夜は何があったのかと元親は必死に問いただしている。
「ah?覚えてねえの?」
「ば、ばっかやろ、何だよその言い方!!!!おれ、何もしてねえよな!?」
「さあ」
「お、おいっ!!」
「覚えてないとは、言わねえよなあ」
わざといじわるなことを言ってみると、予想通りの反応をするのがおもしろい。
「ま、まさか…?」
「…まさか」
「へ…うそ…」
いよいよ元親の顔が青白くなっていくのでさすがにかわいそうだと思い、本当のことを話してやった。
「でも、小十郎に言ったら、あんたクビだな」
「ちょ…それだけはマジで勘弁してくれ!おれだって、変な気はなかったんだ!!誤解だ!!!」
「じゃあ、今まで以上に、おれの言うことちゃんと聞けよ?」
「うん、うん」
首を縦にぶんぶん振って元親は返事している。
もちろん、小十郎に言うつもりはない。
こんなにおもしろいもの、簡単に手放せないだろう。
それに、飯をうまそうに食うやつは、けっこう好きなんだ。
こうして、おれと元親の共同生活はしばらく続くことになった。
―終―
20091016
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