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ニャンニャン
●寂しくても死にはしないけど ※♀
北国では、盆を過ぎると日に日に、夕方にもなると外の風が涼しくなってくる。
蛙も蝉もおとなしくなり、秋の気配がひたひたと近付いてくるのを知らせるようだ。

「北ってのはずいぶん夏が短けぇんだな」
「なんせ北だからな」
「今ぐらいだと過ごしやすくていいなあ」
「短い夏が終わって、短い秋が終わって、したら長い冬が来る」
「そうさなあ、寒くなったらおひめさまは冬眠しちまうんだろ?」

元親は設計図を睨み、小さい部品を組みながら、突飛なことを言う。

「冬眠?」
「春まで目ぇ覚まさねえでさ」
「いつにもましてromanticだな」
「短い秋が終わったら、もうお眠りになられるのかい?」
「眠るかどうかはおれの気分、てとこかね」

相変わらずくだらない発想だ。なんとなくつきあってみるが、何が言いたいのかさっぱりだ。

「なあ」

がらくたをいじる手を止め、元親がこちらへにじり寄ってきた。

「いっこ頼みがあんだけど」
「あ?」

唐突にキセルを握る手をとられる。

「んだよ…」
「おまえが寝てる間、おれが寂しくないようにして」
「はあ?」
「早い話が、思い出作りだな!」

言うが早いか、元親はキセルを奪うと火箱に投げ置き、両手をふさいで組み敷いてきた。

「ばっかじゃねーの?思い出ってん……っ!!」

言葉が終わる前に、口が塞がれる。

「ん…んう」
「いいじゃねーかよ」
「と…うみんとか関係ねーだろうが!」
「そうっちゃあそうかも、ね…」

元親の舌が輪郭伝いに動く。首筋をなぞり、鎖骨を這う。

「こら…っ、ぁ…、」
「平たく言うと、おかずっていうか…そういうやつだ。わかんだろ」
「はあ!?」
「おれ、明日には戻らなきゃなんねえし。したらしばらくは会えねえと思うんだ。次にここに来るときは、多分、こっちは雪の季節だ」
「ふうん…」
「ふうん、て!なにそれっ!寂しくねえの!?」
「別に」
「なんだよっ、それ!!」

温度差のあるこちらの反応に元親がわめく。

「じゃあ、寂しがって、離れたくないって、泣きついたら満足なのかよ。死んでも言わねえ」

つい、売り言葉に買い言葉で返してしまった。

「あー…そう…」



_



むせるような熱気のなか、くんずほぐれつ、お互いを貪りあっている。

「やだ、やだっ…」
「なにが」
「も…、できな…、っ!!あ!」

ほとんど泣きながら懇願するも、元親にはいっさい聞き入れる様子もない。

「うるせえな」

ぐちゃ

冷たい感触が陰部に起こる。

「な、…?」
「すぐよくなる」

元親が何をしたかぐらい、わかっている。

いつもはこんなことしないのに、なぜだろう…

じきに、薬の効果が現れはじめ、意識が朦朧としてきた。

「もとちか…っ、も、っ…と」

揺れる意識の中、止められない衝動が走っていた。







何度も何度も、元親の名前を呼んだ気がするが、それ以外は何も覚えていない。
気がつくと、視界には自分を見下ろす元親が映る。

「あ、いく…」
「ひぅ!!っああ…」

元親の動きに合わせて、びくびくと身体が痙攣する。ほぼ同時に、下半身に熱が走る。

「ん…く」
「あ、あ…!ん!」

達したのち、へなへなと脱力した元親の身体が覆い被さってくる。密着すると、べったりと汗ばんだ身体からは、元親のにおいがする。嗅いでいると安心できる、とても、好きなにおいだ。

「もとちか…」
「おう…」
「いい?」
「あたりまえだろ…おまえは?」

細かく体が震えて、元親か喋るだけでもびくんびくんとなる。

「全身アレみてえになってる…」
「イキっぱなしだもんな。どれ?」
「やめろよ…くすぐってえ」

身体がつながったままで、軽くじゃれあうような愛撫をお互いにするうち、元親が中で再び熱を帯びてきた。

「なか、すげえよ…ぐっちゅぐちゅ」
「あ、っ…ん、…い…」
「もっかい」

記憶があいまいだが、おそらく、その後も何度となく同じことを繰り返し、二人して何度も達していたと思う。







「なぁんか、ばかみてー」

ごろんと仰向けに寝返りながら元親がつぶやいた。

「どうした?」
「へ?…うーん…」

元親の腕を引っ張り出して頭を乗せると、顔を近づける。

「だって、さあ…結構とっておきだったんだぜえ、あれ」
「…」
「なのによお…おればっかじゃねーか」

どうやら、こちらの反応が面白くなかったらしい。

「拗ねてんのか?」
「別に!たださ、もうちょっと、こう、エロかわいくっつーか、さ…」

まったく、めんどうくさい。

「悪かったよ、期待に副えなくて」

鼻がくっつく距離でささやいてやる。甘えるのは嫌いじゃない。

「実はさあ、まだ薬の効果が切れてねえみてえで、うずうずしてんだけど…」
「え…」
「次はおれがしてやるから、な?まだ、できるよな」
起き上がり、元親の上にまたがる。元親のほうけ顔がおもしろい。

「期待を上回る思い出にしてやらあ」
「お、おう…」

元親が自分の中に収まっていくのを感じながら、まためくるめく快感にのまれていく。

もっともらしいことを言ってみたけど、したかったのは自分だったんだと、今さら気づいた。
会えないのが寂しいのは、自分のほうだったか。

次のときまで、元親の感覚を忘れないように、もっともっと作らないとな、思い出ってやつ。




―完

いつにもましてわかりづらいですね、申し訳ございませんm(_ _)m
お盆が過ぎた今の時期、もう涼しいよなあ…って地元のことを考えてました。

お付き合いありがとうございました!
かげつ

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