ニャンニャン
●win or lose ※15
元親は首筋にがりりと歯を立てて、ついた痕を舌でなぞる。ぴくんと身体をゆらしながら、政宗は吐息をもらす。
「食っちまいてえなあ」
元親の鼻が政宗の耳元にある。鼻先がつんつんと耳に当たり、息がかかる。
「…っ」
耳に唇が触れると、今度は舌が耳を這う。隆起に沿うように丁寧に舐められて、ぴちゃぴちゃと響く水音。少し上がってきた元親の息遣いが聴覚を支配する。
「まさむね」
刺激に抗おうともがくが、元親の力強い腕からは逃れられない。
なんともえげつない迫り方をするくせに、低く甘い声で優しく名前を呼んでくる。
「いきなり、んな…何がしてえんだ…」
「欲しいんだよ」
「はあ?」
耳元でささやくと、また舌が動き出す。
耳が熱い。
元親の迫り方が、舌が、たまらない。
「やだ…」
拒否を訴える政宗に、元親は舌を止めた。
「なにが?」
「…」
政宗にわかに潤む隻眼で、訴えるように元親を見つめる。
「言わねえとわかんねえよ」
「…」
無言のまま元親を見る政宗。その表情に捕まったら、思考を停止してしまいそうなほどに思えた。
またか…
「くそ…」
思わず、口に出てしまった苦言。
「…もとちか?」
「今度こそオレの…て思ったんだけどよう…やっぱ、負けたわ」
「ah…?」
本気で悔しがる元親の顔がおかしくて、政宗はついつい吹き出してしまった。
「何がおかしいんだよ」
「sorry、sorry!機嫌悪くすんなよ!って、…あはは は!」
「笑うとこかよ!」
納得いかない様子でぶつぶつ言っている元親に、政宗が抱き付いた。
首に腕を回して、襟足の髪をもてあそびながら慰めるように言う。
「戦わずして負ける、か?」
「そういうんじゃねえけど…」
「あんたらしくねえなあ」
政宗は、腰をついた元親の膝の間に割って入ると、立ち膝の姿勢で自分の着物の帯を解きはじめる。
「ほら。奪ってこそ、のあんただろ?」
「でもよう、さっき、やだって…」
「あれは言葉のあやだ」
元親は政宗に替わって帯を解き、着物を肩から下げていく。
「それとも、負けが怖くて手も出せねえ腰抜けだったかい」
「そうじゃねえ、けど、政宗がいやなら、できねえし…」
弱気なことばかり言いながらも、元親はまた耳元に顔を近付けていく。
「こうしようぜ。おれを満足させたらあんたの勝ち。出来なかったら負けだ」
「…あ?」
「いいだろ?早くしろ」
「お、おう」
最初っからそうしてりゃあいいのに…いちいちいらねえこと考えるやつだ。
本能に支配されていく理性の片隅で、政宗はそう思いながら元親に身を委ねた。
今度もあんたの勝ちなんだよ、とっくにな。
―終―
20090401
※書きはじめからしばらく…できますたぁーー(^ω^)
急転直下でへたれに酔いしれる元親っていうか、ダンナをヨイショできてこその良妻っていうか…何言ってんだろ!
お付き合いありがとうございました!
かげつまいこ
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