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ニャンニャン
●あまのじゃくにさせないで(チカダテ)※R
「お仕置が必要だな」

柱に手をくくられた元親を見下ろしながら、政宗は冷たく言った。
ギリギリきしむほどきつく縛られた手首は、縄が擦れてうっすら血が滲む。
元親にとってみればまったく不可解かつ理不尽なこの状況。しかし、反発は許されなかった。

「俺が何をしたよ」
「アンタは知らなくていいんだ」
「どういう意味…」

ばちっと乾いた音が鳴る。

「口答えは、許さねえ」

政宗は持っていた扇子で元親の頬をぶつ。その痕が赤くなり、熱と痺れを蓄えてくる。
ヒリヒリと疼く頬に表情が歪む元親。そのをあごに扇子の先を当て、少し上向かせ、その隻眼に向けて、説き伏せるようにつぶやいた。

「アンタが、悪い」





政宗は、自分の下半身を露出すると元親の口元に突き出した。

「…はやくしろよ」

元親は政宗の瞳を一瞥したが、政宗は冷たく見下ろすだけである。そのまま無言で口に含むと元親は愛撫を始めた。

「ふん。いいツラじゃねえか。しゃぶらされて興奮してきたか?」

自分のものをしゃぶる元親を見ると、その下っ腹を狙って足を伸ばした。

「っ!…てめ」
「アンタほんとに変態だな。こんなおっ勃ててんじゃねえよ、ええ?」

元親に向けて罵声を浴びせながら、元親のゆがむ表情を見つめながら、体温の上昇を感じながら、政宗の芯はどんどん冷めていった。

「ほらッ、早く…早くイカせてみろよ」
「…っ!!!」

元親の頭を鷲掴みにし、喉でしごかせる。膨張した政宗のそれは元親の呼吸を阻む。苦しさでもがくが、手の自由を奪われたこの姿勢で、元親は逃げることなどできない。

「は、あっ、うあ…」

程なく射精感が意識を支配する。政宗は元親の口から己を引きずり出し、それとほぼ同時に精を放った。

「ッ……!!!あ、はぁ、あ……」
「がっ…っ!げほっ!」

急に空気が流れ込んだためか、元親は激しくむせる。
放たれた濁りは元親の銀色がかる髪、白い肌、深海を映したような深い青みがかった瞳を白くけがしている。輪郭を伝い落ちて胸や着物まで汚れていた。

「いいざまだな、元親よお」
「……」

呼吸が落ち着いた元親は、何も言わず、ただ政宗の目をじっと見つめていた。
屈辱を受けているはずなのに、その瞳には怒りはない。むしろ悲しみが滲んで見える。

「なんだよ、その目。気に入らねえな…」

そう言うと政宗は、元親の手の縄をほどいた。

「ほら…口も、手も使え」

政宗は足を開き、元親の手を後ろに当てた。

「こっちもやれ、早くっ!」

元親は政宗の言うがままにした。それは、愛撫というものではなく、ただの行為だった。





「ふ…あっ……っ!」
「ん……!ぁ…」

政宗は元親の口の中で果てた。元親は放たれた熱をゆっくりと飲み込む。それでも口元からこぼれたものは指ですくい、ぬぐいとる。

「ははっ、いいざまだ、ホントに」

ここに心はない。出したいから出す。それだけ。

「なあ、どんな気持ちだ?言ってみろよ。俺のこと、憎いだろ?」

元親の目の前に顔をおろし、不敵に笑いながら言うが、元親は何も言わず、やはりあの悲しげな瞳をするばかり。

「てめえ…なんだその目はっ…バカにしてんのか!?何か言えっつってんだろ!!」
「してねえよ…」

ぼそっとつぶやく元親の声。低い声は瞳と同じように悲しそうに聞こえた。

「バカになんか、してねえよ、政宗…なんでそんなこと言う?」
「なに…」

元親は政宗の頬に触れる。突然のことに政宗は小さく身体を痙攣させた。触れた掌は政宗の頬を優しく撫でる。

「オレが嫌いなのか?憎いのか…?」
「…ああ、アンタが、憎いんだよ…」

不意に、頬をなでていた手が離れ、政宗の左胸を手の甲で打つ。

「じゃあ、なんでここが泣いてる?」

骨っぽい元親の手。手の当たるところに鈍い感覚が走るが、その感触のせいだけではない。

「泣くほど憎いか」
「……」

そうじゃない。
ただ、怖い。
離れられなくなることが。止められない、自分の感情が。
ズバリ心のうちを見抜かれ政宗の表情には動揺が見え隠れしている。

「俺が悪いのか?」
「…アンタ、俺が好きなんだろ?だったら、何してもいいんだぜ」
「?」
「好きにすればいい」

いっそ、モノのように扱われたら、期待などしないで済むだろうか。
気がつくと、涙が政宗の頬を伝っていた。元親の大きな手が涙をぬぐう。

「…触るなっ」
「好きにしていいんだろ」
元親は政宗の身体を強引に引き寄せて、膝をつかせた。
元親は政宗と唇を合わす。政宗はその行為に、自分への熱と、少しの苛立ちが混じっているのを感じた。

「ん…もとちか…優しくなんか、するなよ…」

言葉に従うように、元親の理性の反抗はささやかなものであった。





元親の腕を枕にぼんやりとする政宗はいつも以上に色っぽく見える。
元親は少し身体を起こし、もう片方の手であごをなそる。唇に触れてくる手を強引に手をとっぱらい、政宗は元親から顔を背けた。

「なあ、政宗よお、俺、おまえに何した?」
「あ?」
「憎まれるようなこと…」

いざ問われると、答えに詰まるものである。

「…気にするな、って言っても、気になる、よ、な」

元親は政宗に背中から抱きつき、髪に顔をうずめている。逃げられない。

「アンタ、俺を好きだって、言った」
「え…?」
「そんな期待させるようなこと言って…、どうなっても知らねえからな」

こいつ、何を言ってるのか、分かってるのか?

「なあ、政宗、それって…」
「?」
「いや、なんでもない」

いちいち言葉にしていたら身が持たない、と、元親は言葉を遮った。

「優しくなんか、しなくていい。飽きたら、早く言えよ…」

そのまま、政宗はぱたりと眠ってしまった。



不安なのは、当然のこと。
怖いのは、自分のこと。

それでも、求める気持ちが勝る。
それでも、人を好きになる。
結局のところ、政宗は元親のことが好きな己にも、政宗を好きだと言った元親にも疑心暗鬼なのだ。ゆえに、あまのじゃく。

何とかしてやるのは俺の責任かな…

そんなことを考えながら、元親もうとうと眠りに落ちた。


―終―
20081005

※ダテチカみたいなチカダテにしたかった。筆頭は、好きになることにも好かれることにも臆病だ、みたいなことを…したかった。どっちも、どうなんだろう…or2
お付き合いありがとうございました!
かげつ





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