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―― 紅い。
なんだ、コレは。












































≪うわあ、いっぱい出てるね♪≫



温かい液体を呆然と見やる。
匂いで血液だとわかった。

だが何故これほど大量にあるのか。
間違いなく致死量だ。

痛みはないが、自分から流れているものなのかもしれない。
先ほどの発砲音からして、撃たれたのだろう。
じゃなければこんなに血に塗れる理由が…。

「白蘭さん!ボンゴレはっ!?」

ボンゴレ…?
入江正一が重役を押し退けやってくる。
あぁ、そうか。此処はミルフィオーレだった。

それでボンゴレが会談に来て、交渉が決裂しそうになって俺が止めたから。
だから俺は撃たれたのか。

呆としたまま動かない白蘭に正一が苛立ったように尋ねる。

「ボンゴレの容態はどうなんですか!?」
「ボンゴレの、容態…?」

何を言ってるんだ。
撃たれたのは俺でボンゴレは、
体を動かそうとして妙に体が重いことに気付く。
血が足りないのか。

動かない身体を見下ろした。

「……?」

ふわふわとした髪がある。
透き通るように白い肌見える。
長い睫毛に縁取られた瞼は閉じられている。






何故ボンゴレが俺の上にいる。






「ボンゴレ…?」

自分に覆いかぶさるようにしている彼の肩をそっと揺すってみる。
血が彼の白いスーツに付いた。
ボンゴレは眼を開けない。

「ボンゴレ、ボンゴレ…」

馬鹿のように何度も名を呼ぶ。
心成しか声が震えていた。

何を恐れる?彼はボンゴレだ。わかっているのに。

「何をしているのですか。寝ている場合じゃないでしょう? こんなところで、貴方は」

そうだ、こんな。屑しかいないような所でも、俺の傍でもない。
貴方のいるべき場所は

「眼を開けてください…っ!!」

冗談じゃない…っ!こんなとこで、貴方が消えるなんて、認めない…!
貴方はもっと高みにいるべき人なのに…っ!
こんな、冷たい床で…

「フザケないで下さいボンゴレ…!!
俺はこんなところで、貴方を一人にするために呼んだ訳じゃないんだっ!!」

ガクガクと揺さ振る。
誰かが何かを言っているが知ったことじゃない。

俺はまだ貴方に何も言っていない、伝えていない。逃げるなんて、許さない…!

貴方は…っ





「俺に、謝らせても、くれないのか…っ!?」




視界が歪む。
熱くなる。


『あいつ程マフィアらしくなくてマフィアらしい奴もいねぇぞ』


今だったら、あの死神が言っていた言葉がわかる気がした。



























「貴方は残酷な、人だ…」




























「御免、な。白蘭…」








声が聞こえ、頬に触れる感触に。
眼から水滴が零れた。

ツナが苦笑する。
いつものように。
これからも、決して変わらないというように。

暫し茫然とした後、吊られるように白蘭も苦笑した。



「狡い、お人。ですね」



「家庭教師に、似たんだよ。きっと」
「そんなことは」
「またまた」

わかってるからいいんだとツナは笑う。
何処か嬉しそうに。
誇らしそうに。

そしていつものように眼を擦る。


「御免、何だか眠いみたいだ」
「……」
「ちょっとだけ、寝てもいいかな?」
「……また、貴方の家庭教師が怒るかもしれませんよ」
「じゃあ、白蘭上手いこと言っておいてくれない、かな?」
「………」
「びゃ、く。らん?」
「…はい」
「お願い、しても、い?」
「はい…」
「ありが、と…」

にゃむ、にゃむと眼を閉じようとしたツナを呼び止めるように白蘭は尋ねる。

「ボンゴレ、でも条件があります」

「うん…?」

「必ず…ーーー」


















































そしてボンゴレ十代目は安心したように眼を閉じた。


















































「白、蘭…。さん?」

恐る恐る正一は声をかける。
白蘭の表情は影になってわからない。

「…………」
「あの…」
「…なーに、正チャン」
「はい…って、正チャ…!?」

正一は顔を盛大に引きつらせる。

「あのさ」
「は、はいっ?」

思わず頓狂な声をだす正一に白蘭は顔を上げる。

「正チャンが前に言ってた十年バズーカってさ」
「は、」
「面白そーだよね」

白蘭は猫のように目を細めた。







「君達もお手伝いしてくれる?
γ君?」
「いいっすよ」

面白毛に一部始終を静観していた男はニヒルに笑った。












































































そう。彼は消えてなどいない。


此処にいないのならば、


呼び寄せてしまえばいい。






彼は帰ってくると、約束したのだから。







だからそれまでこの身体は貴様にくれてやる。




好きにしろ。



























































「じゃあ手始めに、ボンゴレ狩りでもしよっか」











君の願いは叶えてあげるよ 白蘭




もう一人の自分












































ココカラハジマル













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