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彼が眼を閉じると同時に、辺りが色で溢れ、何かが切れた音が響いた。

クリアになった世界で、初めて眼に飛び込んで来た彼は。

この世で最も美しく彩られていると思った。






















































昔から全てが白黒だった。

何を見ても
何を食べても
何をしても

何にも興味も起こらず只惰性で時が経ち、いつの間にか自分は裏社会と呼ばれる場所で生きていた。

そこで撃たれると血が流れることを知った。

そこで人間は冷たくなることを覚えた。

そして彼に会った時、初めて色彩というものを理解した。

アレが騒がしかったのを覚えている。

































【 白蘭が咲く頃 】


































「白蘭」








眺めていた庭園から眼を離し、右に顔を向ける。
今の雇い主が近づいてきた。
「何見てるの?」
「特には」
「そ、そっか」
そう言って苦笑する彼は只の優男にしか見えない。
しかもジャポネの血が大半の為かとても幼く見える。
未だに成人していないと言っても通じないことはないだろう。

が、だからといって人を見た目で判断してはいけない。





「十代目!!」

「げっ獄寺君…っ」

ジャポネなのに銀髪、常に香らせる煙草、二言目には十代目が口癖。

―― 全身爆弾男、スモーキングボム隼人がやってきた。

「お探ししましたよ十代目。
一体こちらで何をなさってらしたんですか」
「えっと別にサボろうとか考えたわけじゃなくてね、ちょっと息抜きしたいな〜、とか思って…」
「わかってます。ずっと座っているだけなんて気疲れもしますよね。
でも、気が付いたらいらっしゃらないなんて心臓に悪いじゃないですか」
「う、ゴメン…」
「いえ、十代目が謝られる必要はありません。勘違いした俺が悪いだけですから。
あ、それで例のものなんですがもうすぐ完成のようですよ。
画家も張り切ってますし、素晴らしいのが出来ると思います」
「〜〜(だから肖像画なんて要らないってばー!)」
楽しみですねと微笑む獄寺に青年は声に出せない叫びを上げる。


「…では自分はこれで」
無駄に煩い男がやってきたのを口実に形式のみの礼をとる。
情けない顔をしながら助けを求めようと青年が口を開くと同時に獄寺が口を開き、此方を見据えた。

「白蘭」
「はい」
「十代目をお一人になさらなくてすんだ、ご苦労だったな」
「……いえ、自分は当然のことをしたまでです。失礼します」

















≪あー泣きそうな顔してる♪ ほんと可愛いいね≫



青年の名前は沢田綱吉。

イタリアで最も力と財力を所有しているドン・ボンゴレ、その人なのだから。

本当に人は見た目で判断してはいけない。












あきゅろす。
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