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ちょっと。
惚けてしまったのは内緒だ。

自分の顔の所為で、ある程度の美形なら馴れてるはずなのに、その祐遥を呆然とさせてしまう程の美形だった。


背は自分より頭一つ以上違うから、175pはゆうに越えてるだろう。
背に見合う体格の良さも、祐遥にとっては溜め息モノだった。

少し長めの黒髪を肩ぐらいで一つに括っているのが、これまたよく似合っていてかっこよかった。

前髪のかかる秀でた額の下には男らしいラインの眉。
切れ長の瞳は勘違いでなければ、藍色にも見える綺麗な黒。



―――黒の光彩って珍しいんだよな…普通は茶だよ、茶。



いらん知識を頭の中でこねくり回しながら、ひたすら祐遥はガン見していた。



―――鼻も唇も男らしー…



くっきり通った鼻筋に、色も厚みも薄い唇。
祐遥と違い顎の線も鋭くて、綺麗ではあるが女と間違われることは決してない顔だ。

顔も躯もなにもかもが、これぞ男らしい美貌!美形!!と常に目標としているタイプの、祐遥が羨望してやまない典型的な美丈夫だった。


「あ、あの…?」


つい。
本当についガン見してしまっていた相手は、自分の視線に戸惑ったような声をあげた。

が。
祐遥の脳内フェスティバルはその声にて最高潮を迎えた。



―――声っ!!声も理想っ!!!!



ちょっと低めの腰にくるタイプのボイス。
女の子にキャーキャー騒がれる声優さんみたいだった。



―――俺なんか変声期きても全然変わんなかったのにーーっ!!



自分の声は。
そりゃ確かに女子と比べれば多少低い。
けれども女子と言ってもまったく問題ないような声で。


『可愛い祐遥ちゃんの声が低くなったら衝撃だ!立ち直れない!!』

小学校から中学にあがる頃、まわりの男達にそう言われ続けて、内心、いや、声高に『ひっく〜い声になってやるっ』と宣言していたのだが。

お蔭さまで、可愛い祐遥ちゃんは変声期を経てもなお、可愛い祐遥ちゃんのままだった。

だから、彼のような声には憧れていた。


顔、躯、声と。
三拍子揃いな、理想が服着て歩いてキタヨーな男が目の前にいる。

もはや祐遥の脳内はフェスティバルを超えて、ブラジルでサンバなカーニバル状態だった。


まあ、普通なら。
そんなのが現実にいたら逆に嫉妬で狂いそうなものだが。
そこは楽しければ無問題な祐遥の、短所を裏返した長所といえる。


「えっと…俺の声は聞こえてるかな?」


しかし。
いつまでも脳内サンバカーニバルに浮かれている場合じゃない。

訝しげに声をかけられ、そこでようやく我に返った祐遥は慌てて頭を振った。


「なら、よかった」


すると。
相手はホワンと笑った。


*


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あきゅろす。
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