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太陽は西に傾き、空は茜色に染まり始めていた。
辺りの木々も、音を起てて流れ落ちる滝のキラキラ輝く飛沫も、紅に染まる刻限。
夜はひそかに、だが確実に訪れようとしている。のに、膝を抱えた煌(アキ)は気にすることなく泣き続けていた。
夜は魔の領域と。
古くから伝えられる教えがあるけれど。
ここは『惑いの森』。
自分を傷つける者などない。
守人たる自分に危害を加える者などいないと解っているから。
煌は夜が訪れようとしている今も、動こうとはしなかった。
帰る気にはなれない。
あの子が、来ないから。
多分きっと、城の者達は心配しているに違いない。
兄も、きっと。
けれど解っていても、やはり動くことは出来そうにも無い。
だって、朝からずっと待っているのだ。
この場所で。
約束を違えたのは自分で。
だから、待つのだ、この場所で。
なにより。
会いたいのだ、彼に。
彼と。彼の赤い龍に。
でも彼は来ないから。
煌は幼い心を、悔いと哀しみの色でぐちゃぐちゃにしながら、ただひたすら待ち、泣き続けるしかなかった。
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