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しかし楽しい時間は、あっという間に過ぎる。

いくらこのままでと願ったところで、宵闇がせまれば帰らなければならない。
共に来ていたヨウも、何度も煌の袖口をくわえ促していた。

けれど会ったばかりのセイと別れがたく、元来我が儘で甘えたがりの煌は、駄々をこね泣きじゃくりセイを困らせた。

そんな煌に困りながらもセイは、幾度も頭を撫で煌を魅力した優しい微笑みを浮かべて、次の約束くれたのだ。


煌は何度も頷いて、ヨウの背に跨がり去る間際も、大声で約束を繰り返し手を振り続けた。

セイは共にすごした滝壷に迫り出した石舞台の上で、やはり手を振り続けてくれていた。

その背後には大きな紅い龍の姿があったけれど、煌はもう怖いとも思わなかった。



次の約束の日。
あの滝壷を訪れると。
セイはきちんとそこにいてくれて。
煌と共にすごしてくれた。
紅い龍にも乗せてくれた。

そしてまた。
次の約束を、くれた。



だが。



次の約束を違えたのは煌だった。



頻繁になりつつあった煌の危険な遊びが、側遣えの者達にばれたのだ。


心配した官達、中でも心配性の雪、そして煌を溺愛してやまない馨が、決して煌を外へは出してくれようとはせず、約束の日、煌は森へと行くことが出来なかった。



そうして一度擦れ違い断ち切られた繋がりが、簡単に元通りになるはずもなく。

森を何度訪れるようとも、セイと出会うことは無かった。



元々、偶然の出会いだったのだ。
連絡を取ろうにも自分が知る彼の居場所は、煌の国よりもっと遠い処。

いくらヨウでも連れていってはくれない、本当の意味で危険な処。


一度、覚えたての文字で書をしたため、滝壷の石舞台に置いておこうかとも思った。
だがセイがここへ来てくれる保証もない。
自分が約束を破ったのだ、すでに呆れられ嫌われたかもしれない。

考えれば考えるほど、嫌な考えが浮かび、結局煌は待つ以外の選択が出来なかった。




もう会えずに数カ月。
雪や兄、官達の目を盗み、幾度か森を訪れたが。

その度に厳しくなる監視が緩むのを待つのも疲れた。
基本、周りは煌に弱いから厳しい監視が緩むのも早いけれど。

それ以上に、会えない哀しみと、約束を違え嫌われたかもしれない絶望が煌を苛んだ。


*


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あきゅろす。
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